トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 車体関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:101~110)


事例:S-110

経年劣化によりボルト締め付け部で千切れて脱落したチェーンスライダーについて

【整備車両】 
 DT230 (4TP) 4TP2 ランツァ  推定年式:1998年  参考走行距離: ― km
【不具合の状態】 
 チェーンスライダーが脱落してなくなっていました.
【点検結果】 
 この車両はお客様が5年以上乗らずに保管されている間に主にキャブレータ内部の固着が原因で不動に陥いり ※1 ,メガスピードにてその再生を承ったものです.外観の腐食していたフロントマスターシリンダの整備 ※2バッテリの交換 ※3 等各部の整備を実施しましたが,今回の事例では紛失しているチェーンスライダーについて記載します.

図1.1 脱落したチェーンスライダー
 図1.1はチェーンスライダーの取り付け部の様子です.お客様が久しぶりに車両を移動させようとしたところ,何か落下したと思ったら,スライダーが落っこちていたと言うことでした.したがって経年劣化により脱落してしまったものであると考えられます.

図1.2 ボルト締め付け部のみ残っているスライダーの残骸
 図1.2はスライダー取り付けボルト部の様子です.ボルトの部分のみスライダーの残骸が挟まれていました.この状態から,スライダーはボルトで締め付けられている部分に極度の疲労が生じ,経年劣化とあいまってボルト締め付け部のみを残して千切れて脱落してしまったものであると考えられます.


【整備内容】
 
新品の部品供給があったため,新品のスライダーを取り付けました.

図2.1 洗浄されたスライダー取り付け部
 図2.1はチェーンスライダーの取り付け部を洗浄した様子です.ボルトのねじ穴は良好な状態を保っていたことから,スライダーの脱落原因にボルトに無理な力が加えられたものではないことが分かります.

図2.2 新品のチェーンスライダー
 図2.2は新品のチェーンスライダーを新品のボルトおよびワッシャで取り付けた様子です.これによりチェーンの擦れを気にすることなくリフレッシュした状態でライディングを楽しめるようになりました.


【考察】 
 チェーンスライダーは比較的地味な印象がありますが,その役割は非常に大きく,これがなければスイングアームはすぐに傷だらけになってしまいます.そして車両の総走行距離数を推測することができる最も重要な部品でもあると言えます.それはスライダーを交換するには基本的にスイングアームを外す必要がある為,スライダーは最も交換頻度の低い部品として位置する為です.
 今回の事例ではボルト部を残し,スライダーが脱落してなくなっていました.材質がゴムであることから,車両に乗ろうが乗るまいが,時間が経過するごとに材料が脆くなっていきます.特に上下の連結が細いスライダーの場合,数年で亀裂が入り,千切れたり紛失したりします.わずかでもチェーンとの接触部にゴムが残っていれば致命傷は避けられますが,全くスライダーがない場合,みるみるスイングアームが削れ,チェーン側もダメージを受けます.したがって本来スライダーは常に良好な状態を維持しなければなりません.しかしながら交換が容易でない為,実際には放置されるケースが多いと言えます.したがって,もしスイングアーム等リヤ廻りを整備する機会があり新品の部品供給が確保されているのであれば,迷わず新品に交換しておきたい部品であると言えます.


※1 フロートバルブの固着やスロージェットの詰まり等によるエンジン始動不能について
※2 フロントブレーキマスターシリンダリザーバタンク上部と点検窓周囲の腐食について
※3 製造段階でのバッテリ端子プラス側の加工不良について





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