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『プラモデルじゃねんだよ』


“エンジンはプラモデルじゃねんだよ。”
整備で困難に陥ったとき、昔親方にそう言われたのを思い出します。

 大学の長い休暇時期などにはよくモーターボートのエンジン整備工場に仕事の手伝いに行っていました。
 「いいかい、プラモデルってのは説明書見てその通りに組み立てれば完成するんだよ。でも中古のエンジンてのはさ、使い古されてあっちこっち消耗してるから、額面通りに組んでも性能が出ない場合があるんだよ。それにうちに来る前に誰かがいじって部品が正しく組まれているかも分からないんだよ。だから部品の機能をひとつひとつ考えながら、裏表、形、向きなんかを良く見て、頭で考えながらやらなきゃだめなんだよ。」
 いつも親方は私が何か仕事を始める前にアドバイスしてくれました。そして私が手こずっていると、「よく見てな、こうだろ」と言いながら全部やってしまうような人でした。


 親方は戦争末期に生まれた団塊の世代より少し前の人でした。ある時は、プリンス自動車勤務時代はミッションジャッキなんかないから、腹の上にミッションを載せて降ろしたもんだと言っていました。本当に!?と驚きながら昔話を色々聞かされたものです。

 
その後自分の仕事としては船ではなくバイクを選んだけれど、親方から教わった“頭で考えながら整備しなさい”という心掛けは今でも私の胸の中で生き続けています。そして壁にぶつかったとき、ふと思うのです。親方ならどうするかな、と。





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