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事例:E-281

ウォータ―パイプの腐食による冷却水の漏れについて

[整備車両] 
 
GSX250RCH (GJ72A) GSX-R250 推定年式:1987年  参考走行距離:約16,000 km
[不具合の状態] 
 エンジンの横から冷却水が漏れていました。
[点検結果] 
 この車両はエンジンから冷却水が漏れているということで、メガスピードにて整備を承ったものです。車両をお預かりして保管していると、静止状態でも冷却水が漏れ続ける状態でした。

図1.1 エンジン横から漏れている冷却水
 図1.1 はエンジン右側面に漏れ出している冷却水の様子です。漏れ出し部の穴は、スパークプラグホールとつながっていて、雨水などが入り込んだ時に排出する排水路です。しかしそこから冷却水が漏れているので、何らかの形でプラグホールに冷却水が入り込んでいると考えられます。

図1.2 ラジエターホース付け根から漏れ出す冷却水
 図1.2 はシリンダヘッドカバーとラジエターホース接続部の様子です。取り付け部から冷却水が漏れ出していることが確認できます。その下にはすぐスパークプラグホールが存在する為、この漏れ出した冷却水が落下して進入していると考えられます。

図1.3 スパークプラグホールに落下した冷却水
 図1.3 はプラグキャップを取り外して内部を点検した様子です。スパークプラグの周囲に漏れて進入した冷却水が確認できます。

図1.4 腐食しているウォータパイプ
 図1.4 は漏れていたラジエターホースを取り外した様子です。ウォータ―パイプが錆で腐食していました。

図1.5 凹凸が著しいウォータパイプ
 図1.5 はウォータパイプを乾燥させた様子です。図の様に表面が錆と腐食でボコボコしていて、この凹凸がホースとの隙間を形成し、そこから冷却水が漏れ出したと結論づけることができます。


【整備内容】
 ウォータパイプの表面の腐食を除去することから整備を開始しました。

図2.1 表面の錆を除去したウォータパイプ
 図2.1 は錆と腐食を除去したウォータパイプの様子です。この段階では侵食されたところの凹凸が残っています。

図2.2 補修材を塗りつけたウォータパイプ
 図2.2 は表面の凹凸を除去する為に強力な材質で表面を埋めた様子です。これにより凹凸を除去します。

図2.3 表面の滑らかになったウォータパイプ
 図2.3 は表面を再度研磨し、凹凸を可能な限り減らした様子です。凹凸に保護材が埋め込まれていることが分かります。これにより表面の段差がなくなり、ラジエターホースとの接触部の隙間を除去することができます。

図2.4 新品のラジエターホースと高圧バンドで締め付けたウォータパイプ
 図2.4 は新品のラジエターホースを修正したウォータパイプに取り付け、更に高圧用の締め付けバンドで固定した様子です。パイプ側もホース側も接触面が良好になり、その締め付けも強化した為、漏れに対して万全を期しました。

図2.5 整備後に実施した総合評価の為の試運転
 図2.5 は修理後に試運転した車両の様子です。走り込んでも冷却水が漏れないことを確認して整備を完了しました。


【考察】
 今回の事例では冷却水の漏れを取り上げましたが、お客様からお電話いただいた際に、症状をお聞きしている最中に、原因から修理工程まですでに頭に出来上がっていました。なぜならGJ72A型に対してこの様な事例を何度も過去に対処したことがあるからです。
 J703型のエンジンはシリンダヘッドからウォータパイプが真上に垂直に伸びてヘッドカバーを突き抜け、その上のラジエターホースと接続されています。その構造に加え、ウォータパイプが鉄でできていることから数十年経過したモデルは錆が発生していること、更にホースバンドがクリップタイプであることから、かなり高い確率で冷却水漏れが発生しています。

 今回の事例においても同様でした。新車時はその構造でも良いかもしれませんが、発売から何十年も経過した場合、やはり腐食した部分は不具合が発生します。したがって、古い中古車を入手した際には、この様な鉄系の部品を中心に点検整備しておくことが大切であると言えます。





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