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事例:D‐23

走行中に落ちた主電源とイグニションキーとの関連性について


【整備車両】

RG250EW (GJ21A) RG250Γ Ⅰ型  推定年式:1983年  参考走行距離:約21,100km


【不具合の状態】

走行中に主電源が落ちました.


【点検結果】

 この車両は走行中に主電源が落ちたということでメガスピードにて点検整備を承ったものです.


主電源が落ちる原因として,メインヒューズの熔解やバッテリ端子の脱落等が考えられますが,

イグニションキーの不具合によるものも少なくありません.



図1.1 こじられて損傷しているシリンダシャッター

 図1.1は不具合を内在している可能性が否定しきれないキーシリンダの様子です.

マイナスドライバー等でこじられシャッター部が損傷していることから,

内部の状態も思わしくないことが推測されます.

また摩耗により文字がほぼすべて消えてしまっていました.



図1.2 被覆の破れているキーシリンダ配線

 図1.2は車体から取り外したイグニションキーシリンダASSYの様子です.


配線を保護している被覆が劣化による硬化と見られる原因でちぎれていました.



図1.3 蜘蛛の巣が見られるカバー内側

 図1.3はキーシリンダ裏側のカバーを開けた様子です.

蜘蛛の巣が2か所に見られたものの,端子部に大きな破損等は見受けられませんでした.



図1.4 錆の発生している可動側端子とスプリングの接触部

 図1.4はカバーを取り外した可動側の端子部の様子です.

スプリングと端子の接触部に錆が発生して抵抗になっていることが分かります.



図1.5 摩耗している端子固定側

 図1.5は端子可動部が接触する端子固定側の様子です.

使用による摩耗が発生しているものの,絶縁等を引き起こすような原因は確認できませんでした.


【整備内容】

 致命的な破損等,確固たる不具合の原因は発生していないものの,車両が1983年の発売であることを考慮し,

イグニションキーシリンダASSYを新品に交換しました.




図2.1 新品のキーシリンダセット

 図2.1は新品のイグニションキーシリンダASSYの様子です.

フレームに固定するボルト及びロックワッシャも付属して入荷しました.




図2.2 キーシリンダカプラの取り付け

 図2.2はイグニションキーシリンダASSYの配線カプラを車体側に取り付けている様子です.

キーシリンダ側は新品になるものの,フレーム側は再使用になる為,

コネクタを中心に状態を点検してから接続しました.



図2.3 トップブリッジに取り付けられた新品のイグニションキーシリンダ

 図2,3は新品のイグニションキーシリンダASSYを車体に取り付けた様子です.

機能が正常に作動することを確認して整備を完了しました.

取り外した古いものはほぼ完全に文字が摩耗して消失していたのに対し,

新品に交換されたはっきりとした文字により,

毎回イグニションをONにする時に感じていた不快感が楽しみに変化することが容易に分かるくらい,

大きな“差”が生まれたことを感じ取ることができました.


【考察】

 2輪のイグニションキーシリンダASSYは,屋外保管されている集合住宅等では,

いたずらによるとみられる行為により,シャッターが無理やりこじられているケースが一定の割合で存在します.

シャッターの破損ならまだ良いものの,中にはキーがONの状態で抜けてしまったり,ONになっているにもかかわらず,

振動等のわずかな位置ずれにより電源がOFFになってしまうといった症状も少なくありません.


 今回の事例では走行中に主電源が落ちたということですが,

実際にイグニションキーシリンダASSYの電源部を分解してみても決定的な原因を見つけることはできませんでした.

発売が1983年であることを考えれば,配線の断線等を含めて主電源が喪失する原因は色々考えられますが,

イグニションスイッチの状態が思わしくない為にOFFになってしまうことも実際に存在します.

この事例ではイグニションスイッチの不具合と断定するだけの物的証拠はないものの,

発売後相当の年月が経過していることを踏まえ,新品が供給されているうちに部品を交換しました.

もともとシャッターがいじくられて破損していた為,その機能の回復という意味も兼ねて,

新品に交換されることは意義があるといえます.

それは機能のみならず,ほぼ完全に消失していた文字を再び美しい状態で読み取れることができるというメリットも,

決して見逃すことのできない非常に大きな要素であるといえます.





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