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ハンドルスイッチ内部の端子表面の金属腐食によるウインカーの不具合について


【整備車両】

NSR250R
G (MC16) (推定)1987年式  〈推定〉走行距離:約17,900km


【不具合の症状】

右側のウインカーが前後とも点灯、点滅しない状態でした。

【点検結果】

まず右側前後のウインカーバルブを点検しましたが、ともに断線等の問題はありませんでした。

現段階で左側のウインカーは前後とも点灯、点滅することから、

ハンドルスイッチまでは電圧がかかっていて、ウインカーリレーも動作していると判断しました。

次に、ハンドルスイッチとメーンハーネスを接続しているカプラを取り外し、

ハンドルスイッチ接続部から右側前後のウインカーまでの断線の有無、配線の状態を点検しました。

配線には導通があり、抵抗はともに約0Ωでした。

このことからメーンハーネスと右側前後のウインカー間には抵抗がなく、配線の状態は良好と判断しました。

ウインカーバルブ取り付け部からアース間の状態も問題ありませんでした。

ここまでで、ハンドルスイッチを除く、右側前後のウインカーに関する配線が問題ないことを確認しました。




図1、腐食による絶縁状態にあった金属端子

図1はハンドルスイッチを分解して、内部の摺動面の金属の状態を点検している様子です。

黄色の四角で囲んだ中央の丸型端子Aはメーンハーネスのカプラを介してウインカーリレーからの電圧がかかります。

黄色い四角で囲んだ画像右側の丸型端子Bは、移動式の金属プレートにより端子Aとつながりメーンハーネスカプラを介し、

右側の前後のウインカーに電流を流します。

抵抗を測定した結果、Bの端子とハンドルスイッチカプラの端子間は∞Ωを示していました。

配線は被覆に隠れている上、車両に取り付けた状態では外部から目視点検することは困難です。

抵抗が∞ということは、断線している場合もありますが、厳密にいえば電気が流れない状態です。

この事例では端子Bとハンドルスイッチカプラ間の配線が見えないので、まず被覆内の配線の断線を疑う前に、

測定のしやすい端子部から点検をしました。

その結果、端子Bは表面でも∞Ωであるところと、電流が流れる箇所がありました。

端子中央が∞Ω、外周部が0Ωになる傾向が確認できました。

このことから、端子Bとメーンハーネスカプラ間の∞Ωは端子Bの表面が影響していると推測できます。

接触抵抗のある部分に電流が流れると、発熱し酸化して接触面が荒れて更に電流が流れにくくなるので、

端子Bは悪循環になっていた可能性もあります。





図2、端子間を接続する移動式スイッチプレート

図2はウインカーリレーからの電流を左右に分ける移動式のスイッチとなるプレートを点検している様子です。

このプレートが右または左に動くことにより、中央の端子からの電流を左右に振り分け、

それぞれのウインカーを作動させています。

接触部分の抵抗を測定したところ、ほぼ0Ωでした。

またプレートそのものに摩耗はほとんどなく、

プレートをを端子に押し付けるスプリングにも衰損や錆による固着等はなく、良好な状態でした。

以上の点検結果から、右側ウインカーが点灯点滅しなかったのは、端子Bの表面が金属腐食により、

絶縁状態になっている可能性が高いと判断しました。

また、点灯点滅したりしなかったりするというお客様からの入庫時の情報に照らし合わせると、

点灯点滅していた時は端子の0Ω付近にプレートが接触し、点灯点滅しないときは∞Ω付近に接触していたと考えられます。

実際にスイッチ廻りを組み付けた際にできるクリアランスはわずかなので、

そのわずかなずれが症状につながった可能性があります。


【整備内容】

図3は各端子を研磨した様子です。


図3、腐食した表面を研磨し抵抗をほぼ0Ωにした金属端子

金属表面を研磨してから再度端子Bの表面及び端子Bとハンドルスイッチカプラ間の導通を測定したところ、

表面の抵抗は0Ω、表面とハンドルスイッチカプラ間の抵抗も0Ωになりました。

このことから端子Bとハンドルスイッチカプラ間の配線は断線しておらず、

内部抵抗もほとんど無視できる良好な状態であることが確認できました。

つまりこの時点で抵抗が∞Ωになった原因は、端子Bの表面の腐食であると判断できます


端子を修正研磨したので、移動式スイッチプレートが端子のどこに接触しても十分な電流を流すことができます。



移動式スイッチプレートも同時に修正研磨し、電源部分の中央端子及び左ウインカー端子も含めてすべて修正研磨し、

金属部食防止剤を薄く塗布しハンドルスイッチを組み立て、

左右のウインカー前後が点灯、点滅することを確認して整備を完了しました。


【考察】

金属端子は表面が腐食してくると電気を通しにくくなります。

この事例ではウインカースイッチ内部の3つある金属端子の1つが絶縁になっていました。

他の2つの端子表面の抵抗は0Ωなので、左側のみ何らかの原因で端子が腐食していったものだと考えられます。

端子を腐食させるものとして大気中の水分による湿気が大きな要因になっている場合が少なくありません。

室内保管であっても、長期間動かされていない金属部は湿気により侵される場合があります。

金属腐食は薬品等での化学反応がない限り、通常の保管状況において一瞬では起こりません。

この事例の車両は修理で入庫される前は右側ウインカーは点灯点滅していましたので、

不具合をもたらした端子は徐々に表面の抵抗が増え、

ウインカーを点灯点滅させる為に最低限必要な電流を流せなくなったことが推測できます。

ハンドルスイッチの中身を分解整備する機会は多くありませんが、

乗らずに何年も保管されていたり、古い車両であれば一度確認しておくことが大切であるといえます。



この事例の場合、症状からハンドルスイッチが不具合を起こしている可能性があると推測できるので、

例えばまず始めにハンドルスイッチをカプラからそっくり新品あるいは動作を確認している中古部品に

交換する点検方法も考えられます。そこで右側ウインカーが点灯点滅すれば、

ハンドルスイッチ内部のどこかが不具合を起こしていた要因のひとつであると推測できます。

しかしすでに絶版で新品部品の供給がない車両では中古部品を使用するか、

部品供給のある他の車両の新品のハンドルスイッチの配線を加工して取り付ける必要があります。

例え中古部品を使用してその時は不具合が改善されたとしても、

使用したものが中古である限りいつ同じような不具合が起こるか分かりません。

ひとまず症状が改善されれば良いというのであれば、

そこで線引きをしていったん修理を完了し、あとは様子を見ましょうということになります。

ですが、根本的には原因が何であったか突き止めないと、将来同じような症状が発生する可能性は排除できません。

やはりそれを防ぐには原因と推測される対象物を絞り、分解点検して不具合を引き起こしていた箇所を突き止め、

何が原因かを解明し、対策する必要があります。そしてその上でもし中古部品を使う場合は、

中古部品が本当に問題なく使用できるのか分解点検して確認しておく必要があります。

つまり場合によっては例えその場で症状が改善されたとしても、

賭けになるような単純な部品交換では正確な整備をしたといえないということです。



ウインカーが点灯点滅するにはウインカーに至るまでに、

イグニション、ヒューズ、リレー、ハンドルスイッチ、ウインカーバルブ、そしてフレームアースも含めて、

それらを結びつける配線といった回路で成り立っています。

一箇所を修理して症状が改善されたとしても、もしかしたらその他の箇所の不具合がその時にたまたま出ていないだけで、

実際には複合した要因が潜んでいたかもしれません。

関連する経路をおさえておかないと、その後に不具合が起きた場合に、トラブルシューティングに同じ手間がかかります。

やはり一つの機関を動作するのに連動している機構のものは、

付随する関連経路も含めて点検整備しておく必要があるといえます。





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