事例:D‐3
【整備車両】
CBR250RJ (MC19) (推定)1988年式 〈推定〉走行距離:約37,500km |
【定期点検結果】
通常の定期点検ではセルモータの分解整備を行うことは多くありませんが、車両の年式や走行距離を考慮して、
おそらく内部にブラシのカーボンが堆積していると推測出来たので、始動系統に特に不具合は発生していないものの、
念の為点検しました。その結果やはり相応のカーボンが堆積しているのが確認出来ました。
図1はコンミュテータの軸受け部周辺に堆積したカーボンの様子です。
下側のブラシが完全に隠れてしまう程に削りかすが溜まっていました。
ブラシの長さはそれぞれ8,2mmと9,3mmだったので、消耗規定値である4,5mmにはまだだいぶ余裕がある状態でした。
スプリングの張りやアーマチュア、コンミュテータの導通及び絶縁状態も正常でした。 |
【整備内容】
ホルダの内部に堆積していたカーボンや埃等を清掃除去し、内部を全体的に点検しました(図2)。
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【考察】
ブラシの使われているモータは回転させればコンミュテータとの擦れで必ず削りかすが発生します。
セルモータはエンジン始動時に短時間しか使用されません。
しかし、キックスタータ機構のある車両を除けば、エンジンを始動させるには必ずセルモータを回さなければなりません。
短時間の摩擦でも、エンジン始動回数が何百回、何千回にもなれば塵も積もれば山となり、
セルモータ内部にはブラシの削りかすが堆積します。
ただちに不具合を引き起こす原因にはならなくても、アーマチュアやコンミュテータに付着物があるのは好ましくなく、
各所の導通や絶縁の不良につながる可能性も出てきます。
やはり年式の古い車両や走行距離の多い車両は、
ブラシの摩耗状態や各所の導通、絶縁状態を定期的に点検しておくことが望ましいといえます。 |
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