事例:S-84
【整備車両】
RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型 推定年式:1983年 参考実走行距離:約9,200km |
【不具合の状態】
燃料コックの取り付けが不十分でした. |
【点検結果】
この車両は吹け上がりが悪い回転数が存在する ※1 ということでメガスピードにて整備を承ったものです.
今回の事例では燃料系統を整備した際に発見した燃料コックの取り付けの不具合について記載します.
図1.1は燃料コックを取り付けようとした際にトルクがかからず,
そのままグルグルとねじが際限なく回転して溝をねじ切ってしまった左側のスクリュ取り付け部の様子です.
正しい取り付けができないことから,すでにねじ溝が破損していたものであり,
今回かけたトルクにより完全に破損したものであると推測されます.
一般的なプラスドライバを使用して手で軽く回しただけで簡単にねじ切れてしまう様では実用に耐えられないといえます. |
【整備内容】
アルミニウムのねじ溝の破損の場合,タップを立てただけでは溝が再生し切れないケースも少なくありませんが,
今回はタップ修正のみで対応することができました.
図2.1は破損したねじ溝をタップにより修正している様子です.
結果論として,今回はこの処理のみで再生することができました.
図2.2は修正したねじ溝に燃料コックを取り付けた様子です.
確実にトルクがかかり固定されたことを確認して整備を完了しました. |
【考察】
燃料コックは使用するたびにレバーを動かす為,
その力の受けとなる取り付けスクリュが確実に締め付けられていなければなりません.
しかしこの事例のGJ21A型の場合,タンクを取り外す際には通常は燃料コックを外す必要があり,
そのたびに毎回スクリュが脱着され,この部分のねじ溝が破損している車両が少なくありません.
特に一度締め付けてしまえば負荷のかからない部位であればまだしも,
燃料コックはレバーを動かすたびにスクリュに負荷がかかる上,
自然落下式の燃料コックであれば,その使用頻度は負圧式の比ではなく,
過酷な使用状況であるといえます.
したがって,燃料コックの取り付け部が破損している場合はすみやかに対処しておく必要があり,
一度ガタが発生すれば,使用回数に対してねじ溝の損傷は飛躍的に大きくなる事も考慮しておくことが大切です.
※1 吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて
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