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【ショウリノ・ユメ】



「ねぇお父さん?」
 休みの日の夕食後、一緒にお風呂に入ろうと7歳の小1が言いました。

「お父さんってさ、ショウリノユメってなに?」
「勝利の夢?」
「うん、そうだよ。ショウリノユメ。」
 1月の冷えた体をシャワーで温めながら、何かに勝つ夢かと思いましたが、すぐに"将来の夢"の事かと気づきました。先に湯船に入った小1は目を輝かせていました。
「それは将来の夢のことかい?」
「うん。そうだよ。僕のショウリノユメは漢字がいっぱい書ける様になることだよ。」
「そうかぁ。頑張ればきっとなれるよ。」
「お父さんのショウリノユメは?」
 頭を洗いながら、私は色々なことを思い出していました。
「今のお父さんが、"子どもの頃のお父さん"から見た、お父さんの将来だよ。お父さんの夢はコンピューターでエンジンを動かすことだよ。もうすぐ夢が叶うかもしれない。頑張ってるよ。」
「良かったね、お父さん。」
 いつもは熱いと言ってすぐに出て行ってしまう子でしたが、この日はずいぶん一緒に湯船につかっていました。

 ここ数か月、オシロスコープにかじりつきながら毎晩遅くまでターボバイク用のエンジン制御ECUのプログラムのコーディング、テスト、デバッグを繰り返していました。休みの日でも、時間を見てはプログラムの開発に没頭していた為、少し寂しい思いをさせていたのかもしれません。






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