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事例:T-2

度重なる衝突によりバケットの折れたパワーショベルについて

【整備車両】 

 パワーショベル付きトラック  推定年式:2012年

【不具合の状態】 

 繰り返される衝突によりバケットが折損しました.

【点検結果】 
 この車両は乗用玩具の一種で音の出るスイッチや輪っか遊び,レバー付きバケットなどが搭載された楽しいモデルです.メーカーは不明です.すでにバケットのレバーが折れて紛失していましたが,壁やふすまへの度重なる衝突によりとうとうバケット本体が折れました.さすがにバケットが壊れたのはショックだったようで,幼児が泣きながら修理の要請をしてきました.

図1.1 バケットの折れたパワーショベル付きトラック
 図1.1は当社の整備工場に持ち込まれたバケットが折れているパワーショベル付きトラックの様子です.一番の問題は修理したところで幼児や幼稚園児たちの負荷に耐えられるかどうかということですが,形だけでも何とか復元することを目指しました.

【整備内容】 
 プラリペアを使用して折れたバケットを復元しました.

図2.1 アームに取り付けられたバケット(外側)
 図2.1は修理しやすいようにトラックからアームを取り外しプラリペアを使用してくっつけたバケットの様子です.このバケットの樹脂の素材が何か特定することが困難だったので,なかば実験的になってしまいましたが,プラリペアで補修できる素材であることが分かりました.プラリペアは非常に硬く,力を加えても他の部位が折れるくらい強度がある,と宣伝するほどのものです.実際に固まったものに力を加えてみると,確かに他の部位が壊れるまで耐えられそうな感じがし,強度は十分だと判断しました.

図2.2 アームに取り付けられたバケット(内側)
 図2.2は内側もプラリペアで補強した様子です.この段階でかなりの強度が出ていました.補修したところはバリや引っ掛かりだけ除去し,触れても怪我をしない様にしました.しかしまた壊されることが想定されるのであまり細部までは成型しませんでした.むしろ完璧に元のデザインを復元したところで,幼児には何の意味もないことです.小さい子供は見立て遊びが得意ですから,この程度の補修跡など無いに等しいはずです.

図2.3 修理の完了したパワーショベル付きトラック
 図2.3は修理の完了したバケットおよびアームをトラック本体に取り付けた様子です.プラリペアを使用した直後は臭いがきつく,硬化するのを待つことも兼ねて数日寝かせ,納車となりました.
 後日工場から取り出してベランダから幼児たちを呼ぶと,待ちかねていたのか幼稚園児の方が先にやってきて,嬉しそうに持っていきました.「ありがとう」と笑顔で言われれば,修理したかいがあったというものです.

【考察】 
 プラスチックと言っても様々なものがあります.特に接着する場合は材質が分かっていないと難しく,何で接着できるか色々試してみなければなりません.今回の事例ではプラリペアを使用しました.割れたバケットには良くくっ付いた為,非常に硬い状態に修復・復元できました.
 小さい子供のおもちゃには安全性も考慮し樹脂製品が非常に多く,割れたり破損した場合は修理が難しいと言えます.というのも,修復しても強度が出にくいばかりでなく,直した部分も平気でガンガン遊ぶからです.今回の事例ではプラリペアを使用しましたが,これは本当に強力です.バケットは当分もちそうなので,次はバケットよりもトラック側のアームが折れそうな感じです.まぁ子どもは遊んでモノを壊しながらその限界を学んでいくものですが,できればこれ以上ふすまや壁に衝突しないでいただきたいものです.

 話をバイクにもっていくと,樹脂で破損しがちなのはやはりカウルです.プラリペアが溶着する素材であれば,非常に強力な補修が可能です.しかしあくまでも用途は補修であり,大きな破損等の修復は困難になることが予想されます.





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