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事例:E‐89

転倒によるウォータポンプカバー及びコネクタの削れがもたらす接続部Oリングの歪みについて


【整備車両】

RG250EW (GJ21A) RG250(ガンマ) Ⅰ型  推定年式:1983年  参考走行距離:約19,000km


【不具合の状態】

ウォータポンプカバーとコネクタの接続面のOリングが歪んで密封性能が低下していました.


【点検結果】

 この車両はお客様が自賠責が切れてから乗らずに数年間保管されていたもので,

エンジンがかからなくなっていた為,メガスピードにてその再生及び走行に必要な整備のご依頼を承ったものです.


クラッチカバー側面からのオイル漏れの修理
※1 を行う際にウォータポンプカバー及びコネクタを取り外した為,

同時に状態を点検を行いました.



図1.1 擦り傷のあるウォータポンプカバー及びコネクタ

 図1.1は取り外したウォータポンプカバー及びコネクタの様子です.

ウォータポンプカバーとコネクタとの接続部の擦り傷がひどい為,内部の状態を点検確認しておく必要があると判断しました.





図1.2 内部まで損傷した擦り傷により歪んだOリング

 図1.2はウォータポンプカバーのコネクタとの接続面の様子です.

擦り傷が内部まで影響し,Oリングが歪んで冷却水の密封性能が低下していました.



図1.3 擦り傷が面を超えて伸びているコネクタ

 図1.3はコネクタのウォータポンプカバーとの接続面の様子です.

Oリングの接触する面にこそ損傷は見られないものの,

擦り傷がアルミ合金を引き伸ばし,ウォータポンプカバーにラップしている状態でした.



図1.4 錆びているウォータポンプカバー及びコネクタ締結ボルト

 図1.4は取り外したコネクタとウォータポンプカバーを締結するボルトの様子です.

コネクタは上下2か所でウォータポンプカバーに組み付けられていますが,

その両方とも著しい錆が見られ,抜き取りが難しい状態でした.

これは外部からの風雨により腐食しただけでなく,

接続面のOリングが歪んだことにより微小に漏れ出した冷却水が毛細管現象により,

上部のボルトまで浸み込んだ可能性は否定できません.


【整備内容】

 コネクタ側はまだしも,ウォータポンプカバーの削れはOリングハウジングまで達している為,

修正して再使用することは信頼性の点から好ましくないと判断し,

すでに部品が絶版であることから中古を再使用する運びになりました.



図2.1 塗装されたウォータポンプカバー及びコネクタ

 図2.1は中古のウォータポンプカバー及びコネクタをブラスト処理,再塗装した様子です.

部品そのものの機能は特に問題ありませんでしたが,塗装の剥がれが著しく非常に見苦しかった為,

クラッチカバーが新品であることから,それに合わせてこれらの部品も美しく仕上げました.



図2.2 ウォータポンプカバーに取り付けられたOリング

 図2.2はウォータポンプカバーのOリングハウジングに確実に組み付けられたOリングの様子です.

状態が極めて良好である為,この先長期にわたりシール性能を発揮することが期待できます.



図2.3 整備の完了したウォータポンプ及びコネクタ

 図2.3は塗装したコネクタ及びウォータポンプカバーを車体に組み付け,冷却水漏れがないことを確認し,

試運転を行い良好であると判断して整備を完了した様子です.

同時にラジエータホース及びクランプも新品に交換することにより,水廻りの安全性を高めました.


【考察】

 部品が絶版である場合,やむなく中古を使用しなければならない場合が少なくありません.

その場合は多くのケースでいわゆる当時物を使用することになりますが,

例えばこの事例の場合,1983年当時の中古部品を使用しました.

すでに四半世紀以上経ている為,塗装がボロボロで見苦しく,そのまま使用するのは憚れる状態であった為,

ブラスト処理により完全に旧塗膜を除去し,新たに塗装しました.

これにより本来の目的である水漏れの回避のみならず,エンジンを美しく魅せる要素が得られたことにより,

車両そのものの価値を向上させ見る者を楽しませるひとつのアイテムとしての役割を取り戻しました.



この事例では転倒による擦り傷が部品接続部内部のOリングに達しており,

いつ水漏れが発生してもおかしくない状態でした.

この転倒傷はおそらくクラッチカバーからのオイル漏れの原因となった転倒により発生したものであるといえ,

やはり転倒して大きく傷ついた箇所は,最低限部分的に点検整備されることが求められるといえます.





※1 “転倒によるクラッチカバーの破損がもたらすミッションオイル漏れについて”






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