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事例:E-274

ガソリン漏れによるオイルシールの変形がもたらすカウンタシャフトからのオイル漏れについて

【整備車両】 
 GPZ400R (ZX400D) ZX400-D3  年式:1987年  参考走行距離:約19,000 km
【不具合の状態】 
 エンジンのフロントスプロケットからオイル漏れが発生していました.
【点検結果】 
 この車両は保管中に不動に陥ったものですが,再生のご依頼を承りメガスピードにて整備を実施したものです.まず圧縮測定を実施したところ750kPaしか圧力が無かった為,エンジンオーバーホールを実施しました.今回の事例ではフロントスプロケットからのオイル漏れについて取り上げます.

図1.1 オイル漏れの発生しているミッションカウンタシャフトオイルシール部
 図1.1 はオイル漏れの発生しているフロントスプロケットの様子です.車両はお客様の保管中に不動に陥ったため,メガスピードにて引き取りにお伺いしました.その際にエンジンからオイル漏れが著しい為,最も多く漏れていたスプロケットカバーを外したところ,その周囲から漏れが発生していることが分かりました.




図1.2 輸送中に出尽くしたエンジンオイル
 図1.2 は4時間程度運転し,整備工場にたどり着いた際に確認したオイル漏れの様子です.軽トラックの荷台が埋まるほどオイルが漏れていました.

図1.3 隙間の空いているミッションカウンタシャフトのオイルシール
 図1.3 は詳細を確認する為,フロントスプロケットを外した様子です.予想通りミッションカウンタシャフトとオイルシールの隙間からオイルが漏れ出していました.しかも本来接触していなければならない部位が,目視で分かるくらい隙間が広がっていることが分かります.この様な隙間があればオイルが漏れ出すのも無理はありません.隙間ができた分オイルシールが縮んだという見方ができます.

図1.4 エンジンドレンボルトから流れ出るガソリン
 図1.4 はオイルパンのドレンボルトを外した様子です.オイルの代わりにガソリンが2リットルくらい滝の様に落下してきました.なぜエンジンの中にガソリンが入ったかは,この車両のキャブレータの構造を考えれば容易に理解できます.オーバーフローパイプが存在せず,エンジンの中に流れ込んだからです.
 以上の結果から次の様に整理できます.
  ➀ キャブレータの不具合により燃料を止められなくなった
  ② キャブレータからエンジンにガソリンが流れ込み,ミッションのオイルシールを変形させた
  ③ 変形したオイルシールからオイルが漏れ出した

図1.5 隙間の広いミッションカウンタシャフトオイルシール
 図1.5 はエンジンをオーバーホールする為にエンジン台に設置した様子です.黄色の矢印で示した部位がオイルシールの隙間です.1mmくらいは隙間があります.なぜ隙間ができたかと言えば,おそらく流れ込んだガソリンによるものだと推測できます.耐ガソリン製品でない場合,長時間ガソリンに浸かるとふやけて変形します.このエンジンは,オイルパンから上にガソリンが2リットル,その上にオイルが2リットル程度入っていました.つまりエンジンの中はほぼ上まで液体で満たされていたことになります.
 こちらで引き取りにお伺いしたときはメンテナンススタンドで垂直に車体が保たれていたので漏れはひどくありませんでしたが,引き取り時にトラックに載せたときはサイドスタンドでミッション側が斜め下に傾いた状態でした.したがって液面は上昇し,余計漏れやすくなったと考えらえます.それと輸送中にかなり揺らされたので,その影響も無視できません.


【整備内容】
 ミッションカウンタシャフト側のカラーは絶版だった為,修正研磨し,オイルシールを新品にすることで対処しました.

図2.1 修正研磨したカウンタシャフトカラー取り付け部
 図2.1 はミッションカウンタシャフトのカラー取り付け部を修正研磨した様子です.同時にリターンスプリングやシフトリンクなど,点検できる部位は確認しておきました.

図2.2 シフトリンクカバーに取り付けられた新品のオイルシール
 図2.2 はシフトリンクに取り付けるカバーを洗浄し,新品のミッションオイルシールとシフトシャフトオイルシールを取り付けた様子です.すでにシフトシャフト側も漏れていたので,同時に交換しておきました.図1.5 では真っ黒ですが,本来はこの様にアルミ地で仕上げられているので,いかに汚れていたかが分かります.

図2.3 新品のオイルシールの取り付けられたミッションカウンタシャフトカラー
 図2.3 は新品のオイルシールの取り付けられたミッションカウンタシャフトカラーの様子です.図の黄色矢印で示した部位がシールとシャフトの接触部ですが,ピッタリ密封されていることが分かります.これによりオイルが漏れずにエンジン内部に保たれます.ここでもう一度図1.5 と比較すれば,いかにオイルシールとカラーの隙間が空いていたかが分かります.

図2.4 漏れの解消したミッションカウンタシャフト
 図2.4 はミッションカウンタシャフトにフロントスプロケットを取り付けた様子です.締め付けボルトおよび外れ止めのガイドは新品に交換しました.また同時に錆びていたチェーンも新しくしました.
 車検取得後に約300km程試運転を実施し,フロントフォークからのオイル漏れを修理し ※1 ,ミッションカウンタシャフトからのオイル漏れが無いことを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 今回の事例ではミッションカウンタシャフトからのオイル漏れについて記載しましたが,元凶はキャブレータのオーバーフローです.車両の発売時期を考えればすでにオイルシールそのものも劣化していたはずですが,ガソリンに浸からなければここまでオイルシールが縮むことはなかったと考えられます.したがって,時代はすでにインジェクションモデルが主流ですが,キャブ車を所有する場合は,そのオーバーフローに特に気を付ける必要があります.この車両の様にキャブレータから外部に溢れる機構が備えられていないものは,全部エンジンの中に流れ込みます.特にGSX250R 型式:GJ72Aではその様なケースが多々見られ,シリンダの中にガソリンが入り込み満タンになって,いわゆるウォーターハンマー現象が起きます.その場合はセルモータがロックして回りません.プラグを外してセルを回すと,プラグホールから噴水の様にガソリンが飛び出します.

 オイル漏れという現象は必ず発生するものであり,そのために修理屋が存在します.しかし今回の漏れの原因の様にオイルシールが経年劣化等でダメになるのではなく,その他の要因で損傷するのは避ける必要があります.その為にも包括的に点検整備を日常から心がけることが大切です.特にあらゆる不具合の発生原因となる不動に陥ることのないように,車両は定期的にエンジンをかけて乗ることが重要です.


※1 シールの経年劣化とストッパリングの入れ忘れにより発生したフォークオイル漏れについて





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