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潰れたOリングの性能低下によるタコメータギヤジョイント部からのオイル漏れについて


【整備車両】

CB250RSA-Ⅱ (MC02)   推定年式:1981年  参考走行距離:約16,500km


【不具合の状態】

タコメータギヤジョイント部周辺からオイルがにじんでいました。


【点検結果】

タコメータの動力取り出し部であるジョイント周囲からオイル漏れが発生しているということで,

メガスピードにて修理を承りました。

図1 オイルのにじんでいるタコメータギヤジョイント廻り

図1はジョイント廻りからエンジンオイルがにじんでいる様子です。

シリンダヘッドとヘッドカバーの合わせ面からのオイル漏れである可能性もある為,

ジョイントを取り外して状況を確認しました。



図2 ジョイントを取り外したギヤ部

図2はジョイントを取り外した様子です。

シリンダヘッドとカバーの合わせ面ではなくジョイント内部からオイルが漏れ出していたものであると判断し,

漏れを止める為に部品の状態を確認しました。



図3 取り外したメータギヤジョイント

図3は取り外したジョイントの様子です。

エンジン側とジョイント間をシールする為にOリングが使用されていますが,

ジョイントに張り付くような状態で,ほぼケースと面一になっていることが分かります。

これではオイルを密封する性能が著しく低下していると判断できます。




図4 新品のOリング(左)と取り外した潰れたOリング

図4は新品のOリング(左)と取り外したOリングを比較した様子です。

取り外したOリングはジョイントのハウジング側面との接触面が潰れ,

エンジンとの接触面とほぼ直角に変形していることが分かります。

これらのことからOリングに全く張りがなくなり,かつ材質そのものの劣化や変形等が複合的に重なり,

エンジンオイルを密封できずにオイルがにじんでいたと考えられます。


【整備内容】

エンジンとジョイントをシールしているのはOリングのみなので,

Oリングを新品に交換し,関連部品を点検清掃しました。


図5 洗浄されたジョイント取り付け部

図5はジョイント取り付け部を洗浄した様子です。

内部の状態は良好でありOリングをそのまま接触させて十分にシール機能が発揮できると判断しました。



図6 ジョイントに取り付けられた新品のOリング

図6は点検清掃したジョイントに新品のOリングを取り付けた様子です。

ゴムに張りがあり,ハウジングから飛び出している部分がオイルを密封する為の潰れしろになります。



図7 修理の完了したジョイント部

図7はジョイントをエンジンに取り付けた様子です。

エンジン始動後にオイル漏れが発生していないことを確認して整備を完了しました。


【考察】

エンジンオイルが漏れ出す原因は多岐にわたりますが,今回の事例では劣化したOリングの性能低下が原因でした。

車両の発売が1981年付近であることを考えれば,30年以上経過している間にゴムそのものが劣化し,

ハウジングに合わせて変形し,弾性を失いシール性能が低下したものであると判断できます。

取り外したゴムの状態からおそらく発売当時の部品であろうことは想像に難くありません。

ゴムは劣化する部品の代表的材質であり,経年のみならず,使用される場所がエンジンであれば,

絶えず熱を受ける過酷な環境であることが分かります。

このような場所に使用されれば,やはり経年や使用に応じてゴムが劣化し,やがてはオイル漏れを引き起こします。

今回の事例の様に特に古い車両であれば,オイル漏れやオイルのにじみが生じている場合には,

当該箇所のみならず,その周囲のゴム部品も同様に消耗していると考え,合わせて整備しておくことが望ましいといえます。





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