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事例:E-218

軸受け部の摩耗により抜け落ちたピンと半分脱落したチョークレバーについて

【整備車両】 
 R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:約15,200 km
【不具合の状態】 
 チョークレバーのピンが抜け落ちていて,レバーが半分脱落している状態でした.
【点検結果】 
 この車両は他店でお客様が中古で購入されたものですが,各部に不具合が見られた為メガスピードにて整備を実施したものです.今回の事例ではチョークレバーの不具合をとりあげます.

図1.1 ピンが抜けている為に半分脱落しているチョークレバー
 図1.1は異常があると判断して取り外されたチョークレバーの様子です.黄色の円で囲んだ部分はピンが抜け落ちている様子です.再度圧入しても,レバーを引いたり戻したりする作業を数回繰り返しただけで図の様な位置までピンが抜けてしまう状態でした.この状態ではレバー上部が脱落してしまい,チョークを引こうとするとおかしな方向にレバーが曲がってしまします.図からも分かる様に,ピンの軸受となる部分が樹脂であることから,使用による摩耗で穴径が広がってしまい,本来圧入されているピンが緩くなっていました.


 ※レバー本体にCHOKE(チョーク)と記載されていますが,それは慣習的にそう呼ぶだけで,実際は作動時に始動経路を開通させることから,厳密にはスタータ【starter】という方が正確です.


【整備内容】
 レバー本体の樹脂部が広がってしまっていた為,レバーそのものを新品に交換しました.

図2.1 組み立てられた新品のチョークレバー
 図2.1は組み立てられた新品のチョークレバーの様子です.樹脂部がしっかりしていてピンを圧入する際も節度ある抵抗感が得られました.

図2.2 新品で組み立てられたスタータASSY
 図2.2はチョークレバーの他,ワイヤ,プランジャASSYを含めて始動に関する操作系統はすべて新品に交換した様子です.当初は左右で長さの異なるチョークケーブルが取り付けられていました ※1

図2.3 節度ある操作感の得られたチョークレバー
 図2.3はチョークレバーを引いた様子です.レバーが新品に交換されガタつきが解消されたことにより,非常に節度ある操作感を取り戻すことができました.これにより操作しやすくなったばかりでなく,ワイヤを引いた状態を保持する安定性も取り戻すことができました.


【考察】 
 樹脂部品は必ず破損します.冷暗所の宝箱の中にしまっておいたとしても,20年も経過すれば脆くなります.ましてやこの事例のチョークレバーの様に,作動させるたびにピンの周囲に負荷がかかる様な部品は,壊れて当たり前と考えるのが自然です.
 今回の事例では新品が入手できた為,部品交換で対処することができました.しかしもし絶版であれば,オーバーサイズのピンの選定から始まり,本来かけなくて良い時間と費用が発生します.したがって,特にこの事例の様に負荷がかかる部分が樹脂で設計された部品に関しては,可能であれば予めストックを用意しておくことが安心につながると言えます.


※1 プランジャの燃料シール部ゴムの変形と左右で長さの違うチョークケーブルについて





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