| オイルタンク蛇腹ホース締め付けクリップの取り付け不良によるオイル漏れについて |
【整備車両】
RG250EW （GJ21A） RG250Γ（ガンマ） Ⅰ型 推定年式：1983年 参考走行距離：約19,000km |
【不具合の状態】
オイルタンクの蛇腹ホースの抜け止めクリップが外れていて，周囲が漏れ出したオイルで汚れていました． |
【点検結果】
この車両はお客様から不動再生のご依頼を承り，メガスピードに入庫されたものです．
オイル廻りの点検一式を実施した際，オイルタンク蛇腹ホースのクリップが外れていることに気がつきました．
図1はオイルタンクとキャップを連結する蛇腹ホース取り付け部の様子です．
赤い四角Aで囲んだ部分がクリップですが，本来の取り付け位置から外れていて，
ホースだけを締め付ける状態になっており，機能を果たしていませんでした．
ホースが取り付け口にある程度かぶさっている為，
オイルタンクを燃料タンクに取り付けた状態では通常の走行では抜ける可能性は極めて低いといえます．
しかし，クリップが適切に使用されていない状態では，
上部から補給した2サイクルエンジンオイルが自然落下してオイルタンクに給油される仕組みになっている為，
蛇腹ホースとオイルタンクのすき間からオイルが漏れ出し，受け皿を伝い外部に排出されます．
また受け皿のドレンパイプは径が小さい為，
ひとたび詰まればドレンホースから排出されるはずのオイルがあふれ出して周囲を汚染し，
更にエンジン本体や排気廻りに落下すれば車両火災にもつながります．
図1からも明確に分かる様に，オイルは受け皿と燃料タンクの接触部からその傾斜方向に漏れ出していて，
これは受け皿に排出されたオイルがドレンパイプから排出される量を上回り，
受け皿上部の燃料タンクとの接触面から燃料タンクを伝って漏れ出したことを示しています．
点検した結果，ドレンパイプやホースに詰まりがなかったことから，外部に漏れ出したオイルは，
オイルキャップから給油したオイルが蛇腹ホースとオイルタンクの繋ぎ目から漏れ出して，
受け皿の単位時間による排出許容量を越して燃料タンクと受け皿の合わせ面から漏れ出したというよりは，
オイルキャップから給油した2サイクルエンジンオイルの量がクリップ位置より上まで満たされていた時に，
蛇腹ホースとオイルタンクの繋ぎ目のすき間から，その下の位置まで漏れ出したものである可能性が高いといえます． |
【整備内容】
オイル汚れの著しい部分を含め，全体的に洗浄することから整備を行いました．
| 図2 燃料タンク下部を洗浄し，蛇腹ホースに正常に取り付けられたクリップ |
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図2は点検洗浄したオイルタンクを燃料タンクに接続した様子です．
クリップを正規の位置に取り付けることにより，抜け止めと確実なシール機能を回復しました．
また同時に配線被覆の破れていたオイルレベルスイッチを新品に交換し，万全を期しました． |
【考察】
RG250Γ（GJ21A）のオイルタンクは燃料タンク下部に設置されていて，
整備性の点から見ると非常に手間のかかる設計になっていると捉えることができます．
またオイルタンクが黒い樹脂であることからオイルの残量を確認することが難しく，
更に構造上燃料タンクを外さなければオイルタンクを取り外すことができず，
燃料タンクからオイルタンクを取り外すには蛇腹ホースのクリップを取り外す必要がある為，
オイルタンクを取り外して整備される機会が，他の2サイクルエンジン搭載モデルより極めて少ないといえます．
しかし古い車両であれば，オイル廻りは確実に点検されるべきであり，オイルタンクもその中のひとつといえ，
この事例の様に普段外部から見えない部分で不具合が発生していることが少なくありません．
今回の事例ではクリップが適正な位置から外れていることにより，
蛇腹ホースとその取り付け部でシールし切れなかったオイルが漏れ出し周囲を汚染していました．
車両火災を避ける為だけでなく，2サイクルエンジンオイルは機関にとって血の一滴であると考えれば，
この様な状態は一刻も早く適正な状態に戻さなければなりません．
オイルキャップに入れこぼしたオイルが受け皿を通って外部に排出される仕組みであることを考慮しても，
周囲の汚染状況等を考えれば，クリップの不適切な取り付けによる不具合は見逃すことができないといえます．
この部分のクリップは，実際に脱着を行えばすぐに実感できることですが，非常にスプリングの力が強く，
一度取り外すと，再度取り付けるのがかなり難しい部類に入る部品であるといえ，
また逆に，正しく取り付けられたものは，余程の外力が及ばない限りは自然に外れることはありません．
つまりクリップが外れていたということは，
オイルタンクを取り外す等の何らかの理由で過去に人為的に取り外された経緯があり，
取り外されたものの，再び取り付ける能力がなく，
そのまま不適切なクリップの位置でオイルタンクが燃料タンクに取り付けられてしまった，
という様な素人整備がされていた可能性が否定できません．
やはり機能を考えれば少なくとも元の状態に戻すなり，適切な処置が必要で，途中で投げ出すことは許されません．
メガスピードではRG250Γ（GJ21A）をはじめ各種オイル廻りの整備一式を承っております．
もしお客様の所有されている車両のオイル廻りが長期間整備されていなかったり，
あるいは過去の整備記録が不明な中古車を入手された場合は，オイル廻りの整備一式が推奨されます．
そのご要望に可能な限りおこたえできるよう，日々精進してまいります． |
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