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事例:E-14
同調調整プラグのねじ山破損に対するヘリサート加工による修理について


【整備車両】

CBR250RJ (MC19)  1988年式  走行距離:約64,500km


【不具合の症状】

3番シリンダの同調調整プラグが斜めにねじ込まれていて、取り外し時にはかなりかじっていて抵抗がありました。


【点検結果】

図1は斜めにねじ込まれている3番シリンダの同調調整プラグです。


図1 、斜めにねじ込まれている3番シリンダ同調調整プラグ

角度θだけ面に対して傾いてねじ込まれていました。

この状態では厳密にいえばねじの頭がガスケットに密着しておらず、頭とガスケットのすき間からねじ溝を伝わって、

マニホールド内部に大気が吸い込まれていた可能性があります。




図2、破損しているねじ山

図2はねじ山が破損している様子です。Aの部分が破損しているねじ溝です。


【整備内容】

軽度のねじ山の破損の場合は溝をタップで切り直すことにより修正出来ますが、

3番シリンダの同調調整プラグホールはヘッドを取り外さないと加工が難しい位置にあるので、

シリンダヘッド分解整備と同時にヘリサート加工を行いました。


図3、ヘリサート加工した同調プラグホールと平面研磨したガスケットシート部

図3はヘリサート加工を行った3番シリンダ同調プラグのねじ穴の様子です。

同時に合わせ面を研磨し、ガスケットの密着度を高めました。




図4、ねじ穴に対して垂直にねじ込まれた同調プラグ

図4は確認の為にガスケットワッシャーなしの状態で、プラグをねじ込み、

ねじ穴と合わせ面に対して垂直に入っているのを確認した様子です。




図5、3番シリンダ同調調整プラグの位置

図5は参考までに3番シリンダ同調調整プラグの位置を示したものです。

上はキャブレータ、下はエンジンやその上に取り付けてあるセルモータ等により、

非常に手が入りづらい位置にあることが分かります。


【考察】

3番シリンダ同調調整プラグは図5の様に手を入れづらい位置にあります。

この車両は以前にメーカー直営店で同調調整が行われたことが分かっていますが、

通常の整備技術者であれば、あれだけ斜めにねじを入れれば、

回し始めで抵抗により異常に気づくはずです。

しかし根元までそのままねじ込まれていたことを考えると、

抵抗を無視して無理やりねじ込んだか、抵抗に気付かなかった可能性があります。

抵抗に気付かなかった場合の可能性では、

推奨締めつけトルクよりかなり大きなトルクの発生する工具を用いて締めつけたことが考えられます。

この場合、工具の締め付けトルクが大きいので、わずかなねじの抵抗があっても整備者に伝わらず、

それを上回る力で容易にそのままねじ込んでしまうからです。

プラグはM5×P0,8でねじの頭に+ドライバーが使用できるように溝が切ってあるので、

やはりドライバーの低トルクで締め付けていく必要があります。

手締めであれば、わずかな抵抗でも察することができ、誤った角度で一気に締め付けてしまうおそれもありません。



今回の整備はエンジンシリンダヘッドの分解整備、精密検査(オーバーホール)のご依頼を承り、

エンジンを降ろしヘッドを取り外した時に発見したものなので、良好な作業条件でヘリサート加工を行うことができました。


しかしもし車載状態で整備をしなければならない場合は、工作工具を入れて加工するスペースや、

切り粉の問題等を含め、難しい整備になります。その様な事態にならない為にも、

やはりエンジンの吸気系統に直接あけられているプラグ溝ということを考え、

同調調整の際にプラグを脱着するときは慎重に行う必要があるといえます。



【補足】

「ヘリサート」は株式会社ツガミががアメリカREFAC社との契約のもとインサートの商標として使用していたものですが、

一般的にはねじ山を一回り大きく開け直し、そこに元のサイズの強度のある溝を埋め直す加工をさします。

ヘリサート"helisert"(helical coil wire screw thread insert)加工を行うことにより、

脆弱な母材に強度のあるねじ穴を設けることが可能になります。





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