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事例:E-263

燃料コックからのガソリン漏れと車検時の点検整備について

【整備車両】 
 ZRX (ZR400E) ZR400E-2  年式:1995年  参考走行距離:約20,800 km
【不具合の状態】 
 燃料コックから燃料漏れが発生していました.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードにて継続検査(車検)のご依頼を承り,その際に前整備として法定24か月定期点検を実施したものです.フロントブレーキスイッチの不具合 ※1シフトペダルの不具合 ※2 等がありましたが,今回の事例では漏れの発生していた燃料コックについて取り上げます.

図1.1 漏れの発生していた燃料コック
 図1.1は漏れの発生している燃料コックの様子です.点検の為タンクを取り外して保管していたところ,12時間でかなりの量の燃料が漏れ出していることを確認しました.このタイプは負圧式ですからPRI(プライマリ)以外の位置すなわちONまたはRESでは負圧をかけないと燃料が出ない仕組みになっています.ですので平常時であればエンジン停止状態において燃料が止まっていなければなりません.
 入庫した段階でキャブレータ周囲がガソリン臭かったので,どこかしら漏れが発生していると考えていましたが,今回の発生源はコックでした.もちろんガソリン漏れは保安基準に照らせば逸脱していますから,事前に整備しておく必要があります.普段気づかなくても定期点検の際にこの様な不具合を洗い出せることも含め,車検時における定期点検は非常に重要です.


【整備内容】
 燃料コックASSYを新品に交換しました.

図2.1 点検清掃したコック取り付け部
 図2.1は燃料コック取り付け部を洗浄した様子です.古い車両は塗装がフヤけてぶよぶよになって剥がれていたりしますが,この車両は年式を考慮すれば比較的良好な状態であると言えます.

図2.2 新品の燃料コックASSY
 図2.2は新品の燃料コックASSYの様子です.フィルターも新品になることにより,燃料を正確に止めることができる性能だけでなく,タンク内部のガソリンの濾過性能も取り戻すことが期待されます.

図2.3 燃料漏れの解消した燃料コック
 図2.3は燃料タンクに新品の取り付けボルトおよびガスケットを使用して新品の燃料コックを取り付けた様子です.24時間テストし,燃料漏れがないことを確認して車体に取り付け,整備を完了しました.
 ここで重要なのは純正新品でも必ず漏れのテストを実施することです.メガスピードにて過去に純正の新品の燃料コックをタンクに取り付け,燃料を入れた数時間後に燃料コック本体表面から漏れが発生するという不具合に遭遇した経験があるからです.もちろん純正部品ですからある程度は信頼できるものですが,その様なことが実際に発生していることから,必ず点検を実施しています.そこまで確実におさえるのが当社の整備品質です.


【考察】 
 インジェクションモデルが主流になった現在,燃料コックそのものが取り付けられていない車種も増えていますが,少なくともキャブレータの車両であれば燃料コックが必ずあり,その整備が必須になります.発売から数十年経過した車両であれば,まず漏れています.そのまま放置すれば車両火災につながる危険性もある為迅速に対処すべき重要な個所であると言えます.
 ガソリンは漏れれば臭いが発生しますが,一般ユーザーでは燃料漏れの発生源が分からない場合や,軽微な漏れであれば気づかない場合もあります.特に車検制度の無い軽二輪以下の排気量の車両の場合,燃料を漏らしながら走っている姿を見かけますが,それは“アウト”です.車検のある車両であれば,点検項目に明記されていることからも,2年に一度は燃料系統を点検する機会がある為,その様な危険行為を避けることができます.ガソリンは引火点がマイナス40度程度の危険な可燃物ですから,やはり漏れを発見した場合はすみやかに整備しなければなりません.メガスピードでは認証工場として,車検前の法定定期点検を大切にしています.その際に不具合を解消しておけば,その後の2年間のバイクライフを安心して楽しめるというものです.


※1 ブレーキスイッチ接続端子の隙間拡大によるフロントブレーキランプの点灯不良について
※2 シフトペダル・アジャストロッド固定ナットの緩みとシフトフィーリングの悪化について





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