トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:241~250)


事例:E-243

クラッチドリブンプーリー締め付けナットの脱落によるエンジンからの異音について

【整備車両】 
  セピア (CA1HB)   推定年式:1991年  参考走行距離:約6,300 km+10,000 km (メーター1周)
【不具合の状態】 
 走行中にカラカラとエンジン付近から異音が発生していました.
【点検結果】 
 この車両はお客様が日常のお買い物等で使用されているものですが,数日前から走行すると変な音がするということでメガスピードにて整備を承ったものです.
 まず不具合の状況を確認・共有する為に試運転を実施したところ,確かにエンジン内部から異音が発生することを確認しました.また加速に違和感を覚えました.異音の発生はエンジン回転数に正確に比例しない為,駆動系の不具合が発生していると判断してプーリーカバーを外すことから点検を開始しました.

図1.1 センターナットの脱落しているクラッチドリブンプーリー
 図1.1 はプーリーカバーを外して駆動系の内部を確認した様子です.クラッチドリブンプーリーをシャフトに固定するナットが脱落していました.また固定がシャフトのスプラインだけになったことによりローターに振れが生じ,プーリーカバーと接触して傷が発生していました.

図1.2 プーリーカバーに脱落したナット
 図1.2 は取り外したプーリーカバーの様子です.図の位置にナットが脱落していました.プーリーの回転に接触しながら周囲を転がっている音が外部に異音として伝わったと考えられます.またプーリーカバー側にローターと接触したとみられる円周上の傷が発生していることが確認できます.


【整備内容】
 可能であれば乗って帰りたいというお客様のご要望により,今回は脱落していたナットを取り付けることで対応しました.

図2.1 規定トルクで正確にシャフトに取り付けられたクラッチ
 図2.1 は脱落していたナットを再使用して規定トルクにて確実にクラッチをシャフトに固定した様子です.欲を言えばナットは新品にしたいところですが,今回は部品入荷にかかる日数を考慮し,ナットを再使用してお客様に即乗っていただけるようにしました.
 実際に整備後に試運転を実施し,異音が解消したことや加速にガサツキがなくスムーズになったことが確認できました.


【考察】 
 この車両は数年間まったく駆動系の整備がなされていない状態でした.その結果クラッチドリブンプーリーのナットが脱落するという事態に陥りました.特に日常の足として下駄代わりに原付を利用されるお客様の場合,乗りっぱなしになっていることが少なくありません.軽二輪を含め原付は車検がない為,定期点検がなされていないケースが潜在的に多く,今回の様に不具合が発生してからの後整備になるのは決して珍しくはありません.しかし,日常の足に使うからこそ,万全な状態で乗りたいものです.そのためには定期的な点検整備が欠かせません.
 もっとも,原付は車両価格が安価なため,点検整備する費用で中古に買い換えられると思われるかもしれません.しかし中古は所詮中古です.買ったところで点検整備しなければ結局は同じことを繰り返します.つまり,原付であれ大型バイクであれ,エンジンを使用している乗り物に乗る限りは点検整備し続けなければならないのです.

 今回の事例はクラッチでしたが,原付はブレーキがロクに効かない車両に乗られている方が少なくありません.しかし例え原付であろうとも,30km/hの世界では万が一人体が損傷を受ければただでは帰れません.無事に日々を過ごす為にも,やはり定期的な点検整備を受けることが,つまらない怪我で人生を台無しにすることを避ける最大の秘薬であることを強調して,今回の報告を終えたいと思います.





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