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事例:E‐98

エアクリーナダクト固定リングの位置ずれについて


【整備車両】

GSX250RCH (GJ72A) GSX-R250  推定年式:1987年  参考走行距離:約18,100km


【点検結果】

 この車両はお客様のご依頼を承り,メガスピードにて各所分解整備を実施したものです.

エアクリーナボックスのドレンホースからオイル漏れが発生していた
※1 ことに対する点検整備や,

キャブレータのオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)を行う際にエアクリーナボックスを取り外し,

内部を確認したところ,左側のダクトを固定するリングの位置がずれていることを確認しました.



図1.1 取り付け溝から外れている左ダクト固定リング

 図1.1はエアフィルタ側に脱落したリングの様子です.

丁度リング1つ分位置がずれてしまっていることが分かります.

この部分は外力がかからない為,他店で数年前にキャブレータが整備された際に,

位置がずれたまま取り付けられてしまったものであると判断できます.

右側は正常に固定されていました.



図1.2 ダクト固定リングの点検

 図1.2は位置のずれていたリングを一旦取り外し,状態を確認している様子です.

リングに強力な張りがある為,十分に再使用可能であると判断しました.



図1.3 取り外したエアクリーナダクト

 図1.3はリングを取り外し,エアクリーナボックスから取り外したダクトの様子です.

点検した結果,亀裂や損傷,硬化等は見られず状態が良好であることから,

ダクトも再使用可能と判断しました.


【整備内容】

 リングとダクトは状態から再使用可能であることから,清掃して正規の位置に取り付けました.



図2.1 取り付け溝にはめ込まれた左ダクト固定リング

 図2.1は正確に取り付けられたダクト固定リングの様子です.

図1.1と比較すると,溝に確実にはめ込まれていることが分かります.



図2.2 整備の完了したエアクリーナボックス

 図2.2はリングを取り付けたエアクリーナボックスの様子です.

黄色の楕円AとBはそれぞれダクト固定リングが内部に取り付けられている場所を示しています.

今回の事例では車両を跨って左に当たるBのダクトすなわち1番2番シリンダ側のリングがずれていました.



図2.3 キャブレータに取り付けられたエアクリーナダクト

 図2.3はリングを取り付けたエアクリーナボックスをキャブレータに取り付けた様子です.

形状に異常がないことを確認して整備を完了しました.


考察】

 エアダクト固定リングはエアクリーナボックスの奥にある為,取り付けが比較的困難であることから,

作業者の技量不足の結果きちんと所定の位置に取り付けられず,

ずれたままエアクリーナボックスがキャブレータに取り付けられている車両を見ることが少なくありません.

まだリングがあれば良いものの,素人整備によりリングそのものが取り外されて紛失しているケースも見受けられます.

 確かに固定リングがなくても大きな不具合が発生する可能性は高くないとする考えもあるかもしれません.

しかし本当にそうであれば,メーカーが設計の段階でコストをかけずに部品を省略するはずですし,

実際にリングを取り外すとわずかな外力でダクトが潰れてしまい,

そこからエアフィルターを通さない空気がキャブレータに流れ込みます.

そうなるとエアクリーナの取り付けを前提とした空燃比が崩れるだけでなく,ほこりや小さなゴミが内部に吸い込まれれば,

エンジンの寿命を縮めることにもなり兼ねません.

 やはり部品はそれぞれが機能を担っているととらえれば,根拠なしに省略することは暴挙であるといえ,

正確な知識や技術があり適切な判断ができる整備技術者であれば,まず設計者の意図を尊重することから始めます.

 メガスピードでは純正の取り廻しや,設計意図を大切にしています.

もちろんそれがすべてではありませんし,時代とともに設計は見直され,より良いものへと変更されているのは周知です.

しかしリコール等の大幅な欠陥や,最低限標準仕様で大きな変更がなされていなければ,

基本的に発売当時の状態に忠実になる必要があることを否定する要素がどこにもないことは明らかなはずです.






※1 “劣化したエアクリーナボックスドレンホースの亀裂の発生によるオイル漏れについて”






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