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事例:D-53

レギュレータの故障による不安定なヘッドライトの点灯状態について

【整備車両】 
 VS400FR (VK51A) Intruder(イントルーダー)400  年式:1994年  参考走行距離:約22,800 km
【不具合の状態】 
 ヘッドライトの明りが時々暗くなったり不安定な状態でした.
【点検結果】 
 この車両はお客様が半年ほど前に個人売買で入手されたものです.最近信号待ちの時にヘッドライトの点灯具合が不安定になったということで,メガスピードにて点検整備を承り,状況から充電系統の点検を実施しました.

図1.1 溶損しているステータコネクタ
 図1.1は燃料タンクを取り外し,ステータからの三相の配線を点検した様子です.コネクタ樹脂が熱により部分的に溶損していることを確認しました.

図1.2 故障していたと推測されるレギュレータ
 図1.2は故障していたと推測されるレギュレータの様子です.ステータ側のコネクタに損傷はなく,溶けているのはレギュレータ側のコネクタのみでした.




図1.3 溶損したコネクタ
 図1.3は溶損したコネクタの様子です.三相ともすべて溶けていました.特に被覆が破損し内部の銅線が露出しているものは危険であると言え,ステータから常に交流が供給されている部位であることを考えれば,大惨事になり兼ねません.早急に対策が必要な状態であると言えます.
 この車両の発電能力は交流60V程度あり,それを整流して直流14V程度に落とす際に発生した熱の逃げ場がレギュレータ内部で何らかの形で失われたことにより,このような事態に陥ったものであると推測されます.


【整備内容】
 今回の充電不良はレギュレータの破損による電圧制御不良と判断し,新品に交換しました.

図2.1 新品のレギュレータ
 図2.1は新品のレギュレータの様子です.設置個所から,放熱対策の為にケースが大きく設計されているものと推測されます.

図2.2 新品のレギュレータ側コネクタ
 図2.2は新品のレギュレータから出ているコネクタの様子です.図1.3の溶損したコネクタと比較すれば,破損したコネクタがかなりの熱をもっていたことが分かります.

図2.3 接続されたコネクタ
 図2.3は新品のレギュレータを車体に取り付け,三相交流からのコネクタとバッテリその他のコネクタを接続した様子です.

図2.4 車体に取り付けられた新品のレギュレータ
 図2.4は車体に新品のレギュレータを取り付けた様子です.全体を見れば分かりやすいのですが,この車両のレギュレータは排気管の真上に設置されています.エキゾースト付け根ではないにしろ,マフラーの上に設置された状態では熱的に厳しい条件にあると言えます.レギュレータの半導体樹脂部に比べ放熱フィンの面積が大きいことからも,設置場所設計に苦慮した末,苦肉の策でレギュレータ側で対策したものであると考えられます.


【考察】 
 レギュレータは半導体部品ですから,使用や経年にともない必ず故障します.したがって消耗品であると考え,特にバッテリ点火の車両においては,故障すると充電不良を発生してバッテリ上がりを起こすため,旅先でエンジンが止まることが少なくありません.したがって,少なくとも製造から10年程度経過している車両であれば,故障する前に新品に交換しておくことが望ましいと言えます.わずかな予防的整備の先行投資で,楽しい旅先でのエンジン不動という悲劇を回避することが可能になります.

 この車両も発売からすでに,いつレギュレータが故障してもおかしくない年月が経過していました.特に今回の事例では,単なるレギュレータの故障によるヘッドライトの点灯不安定だけでなく,カプラ部でむき出しになった銅線の短絡による事故の危険性をはらんでいたため,想像以上に重大な結果を引き起こす可能性がありました.確かにこの車両のレギュレータの設置部位はマフラーの上であることから熱に弱いと判断することができますが,その影響を無視してもすでに交換しておくべき年月が経過していたため,起こるべくして起こった不具合であると言えます.いづれにしても,早期にレギュレータを交換しておけば何の不安も抱く必要がない為,特に素性のわからない中古車等を購入した場合は,まずレギュレータを交換しておくことが望ましいと言えます.





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