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事例:D-49

オイルレベルスイッチ本体ゴム部の衰損による2サイクルエンジンオイル漏れについて

【整備車両】 
 R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:約15,200 km
【不具合の状態】 
 オイルレベルスイッチから2サイクルエンジンオイルが漏れていました.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードで整備を承る前に他店でヘッドガスケットおよびピストンリングを交換したとされるものです.当社で点検したところリザーバタンクには全く冷却水が入っておらず,ラジエータにもキャップ口元付近は冷却水が無い状態でした ※1 これではオーバーヒートに陥る危険性があります.その他各部に異常が見られましたが,今回の事例では,オイルレベルスイッチからのオイル漏れについて記載します.

図1.1 オイル漏れの発生しているオイルレベルスイッチ取付部
 図1.1はオイルレベルスイッチの取付部から2サイクルエンジンオイルが漏れ出している様子です.オイルタンクとの密着部のゴムが衰損して密封力を失い,液体が漏れ出したものであると推測することができます.

図1.2 取り外した古いオイルレベルスイッチ
 図1.2は取り外したオイルレベルスイッチの様子です.オイルタンクとの接触部のゴムにおそらく過去に漏れた経緯があると推測されるような,液体ガスケットによる補修の痕跡が見られました.

図1.3 補修されていたオイルレベルスイッチ取付部
 図1.3は液体ガスケットが塗られていた部位を拡大した様子です.液体ガスケットはゴムの溝に入ってしまい,ほとんど意味を成していないことが分かります.これでは密封性能が不十分な為,オイル漏れが発生しても不思議ではありません.取り外す時にほとんどオイルレベルスイッチの抵抗が無かったことが,ゴムの衰損を物語っていました.


【整備内容】
 絶版であればシール部をオーバーサイズにする等の対策を考えるところから入らなければなりませんが,まだ新品の供給があった為,新品に交換することで対応しました.

図2.1 オイルレベルスイッチ全体像
 図2.1は新品のオイルレベルスイッチの全体像です.もともと取り付けられていた当時の部品より配線が長くなっていることが分かります.これは他車種と部品統一された結果ともとれますが,実際には配線を長くすることにより脱着時の配線への負荷の低減を考慮したものであると言えます.

図2.2 オイルレベルスイッチ取付部
 図2.2は新品のオイルレベルスイッチのオイルタンクに接続する部位の様子です.図では分かりづらいですが,取り外した衰損しているゴム部と比べて,新品は張りがあり,しっかりしています.

図2.3 オイル漏れの解消したオイルレベルスイッチ
 図2.3は新品のオイルレベルスイッチをオイルタンクに取り付けた様子です.明らかに取り付ける際のゴムの抵抗が大きく,しっかりとタンクに密着・密封していることが指先から読み取ることができます.実際に試運転を行い,オイル漏れが解消したことを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 2サイクルエンジン搭載モデルには必ずと言って良いほどオイルレベルスイッチがオイルタンクに装着されていますが,すでに発売からかなりの年月が経過しており,オイル漏れが発生しているケースが少なくありません.

 一般にオイルレベルスイッチとオイルタンクの接触部は,大きく2つに分けることができます.ひとつはガスケットを使用した締め付けであり,もう一つはこの事例の様にオイルレベルスイッチ本体そのものでオイルを密封しているタイプです.前者であれば例えオイル漏れが発生してもガスケットを交換すればオイル漏れが解消する場合がほとんどですが,この事例の様な場合,オイルレベルスイッチそのものをASSYで交換する必要があります.

 確かにこの事例の様に衰損して潰れたゴムに液体ガスケットを塗布してオイル漏れを直そうとしたくなるのも無理はありませんが,やはりそれでは長持ちせず,今回の様に漏れが発生してきます.したがって,もはやオイルレベルスイッチそのものを消耗品と考えて,漏れが発生した場合は潔く新品に交換しなければなりませんし,むしろ新品の供給があることに感謝すべきであるとも言えます.


※1 空になったリザーバタンクとラジエータ内の冷却水不足によるオーバーヒートの危険性について 





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