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事例:D‐19

取り付けボルトの緩みによるニュートラルスイッチカバーからのオイル漏れについて


【整備車両】

RG500EW-2W (HM31A) RG500Γ(ガンマ) Ⅱ型  年式:1986年  参考走行距離:14,000km


【不具合の状態】

ニュートラルスイッチからミッションオイルが漏れていました。


【点検結果】

各所点検整備を行い水漏れオイル漏れ,燃料漏れがないことを確認してから40km程走行し,

再度エンジン外観を点検しているとニュートラルスイッチからオイルの様なものが流れ出しているのを発見しました。

色やニオイ,漏れ出した場所から考えてトランスミッションオイルであると判断できます。

図1 オイル漏れの発生しているニュートラルスイッチ周辺

図1はミッションオイルがニュートラルスイッチ下部から流れ出ている様子です。

黄色い線で囲んだ部分が流出落下しているオイルです。

スイッチカバーを見ると,右下の取り付けボルトがオイルにまみれているのが確認できました。



図2 ニュートラルスイッチ取り付けボルト廻りから漏れ出しているオイル

図2は右下のニュートラルスイッチ取り付けボルトからオイルが漏れ出している様子です。



図3 ニュートラルスイッチボルト穴に入り込んでいるオイル

図3はニュートラルスイッチカバーを取り外した様子です。

ボルトを取り外す時に明らかに緩んでいたので,

オイル漏れの大きな原因のひとつに取り付けボルトの緩みが考えられます。

黄色い四角Aで囲んだ部分は右下の取り付けボルトハウジングですが,

本来あるはずのないミッションオイルが溜まっていることが確認できます。

ボルトが緩んだことにより,ニュートラルスイッチの圧着力が低下し,

すき間からねじ溝を通って外部に漏れ出したと判断できます。



図4 合わせ面の劣化したガスケット

図4はニュートラルスイッチを取り外した様子です。

合わせ面のガスケットが劣化していたので,ボルトの緩みと複合してオイル漏れの原因になっていたと考えられます。


【整備内容】

ニュートラルスイッチの合わせ面は金属であることから,可能な限り平滑に研磨しました。

図5 合わせ面を研磨したニュートラルスイッチ取り付け部

図5は合わせ面を研磨したニュートラルスイッチ取り付け部の様子です。

取り外した時にはそれ程大きな傷や歪みはありませんでしたが,密封性を高める為に研磨しました。



図6 点検清掃したニュートラルスイッチ及びカバー

図6は点検清掃したニュートラルスイッチのカバーと,ニュートラルスイッチ本体の様子です。

カバーにはスイッチとの接触面のシミ,スイッチには端子との接触面に跡がありますが,

ともに状態は良好と判断しました。



図7 新品のガスケットを取り付けたニュートラルスイッチ

図7は新品のガスケットをニュートラルスイッチに取り付けた様子です。



図8 規定トルクで締め付けられているニュートラルスイッチ取り付けボルト

図8は規定トルクでニュートラルスイッチカバーを締め付けている様子です。

この事例のオイル漏れの原因のひとつが取り付けボルトの緩みであることからも,

正確なトルクで締め付けられることが非常に重要になります。



図9 オイル漏れの解消されたニュートラルスイッチカバー

図9はオイル漏れの解消したニュートラルスイッチの様子です。

30km程試運転を行いオイル漏れが発生していないことを確認して整備が完了しました。


【考察】

2サイクルエンジンを搭載した車両は4サイクルのそれと違い,振動がかなり大きいことが各部の緩み等につながります。

この事例のニュートラルスイッチカバーからのオイル漏れは,取り付けボルトの緩みが大きな原因でした。

ニュートラルスイッチは通常の整備で脱着する部品ではないことから,

ボルトの緩みは作業者の締め忘れや締め付け不良というよりも,振動により緩んだのではないかと推測されます。



エンジン廻りの部品は熱や振動の影響を直接受ける為,かなり過酷な条件で役目を果たしているといえます。

車両の発売が1986年ということから,ガスケットそのものの使用や経年による劣化も十分に考えられます。

試運転を行うまでオイルが漏れなかったのは,

ニュートラルスイッチは取り付け位置がミッションオイル油面よりも上部にある為,

エンジンをかけない状態ではオイルがニュートラルスイッチ部まで達していなかった為であると考えられます。

そしてエンジンを始動して走行したことによりオイルが飛散,潤滑し,

ニュートラルスイッチ部に達して漏れ出したと考えられます。

エンジン停止後は再び油面が下がり,潤滑した分がすべて漏れ出したことにより,オイル漏れは一時的に止まりましたが,

エンジンをかければ再び漏れ出します。


ニュートラルスイッチはボルト2本で固定されていますが,頭がプラスのねじも,他のボルトと同様に,

規定トルクにて正確に締め付けられる必要があります。

エンジンには内部の部品も含めてプラスねじで締め付けされている部品が存在します。

トランスミッションのシフト機構等にプラスねじが取り付けられているケースがありますが,

トルクドライバを用いて規定トルクで締め付けず,

プラスドライバーでいわゆる“勘”で締め付けをしている作業者を見受けることがあります。

実際にトルクドライバで測定すると,人間が手で勘で締め付けたプラスねじは,

そのほとんどが締め付けトルクに達していないといっても過言ではありません。

特にM6の径に対する標準ボルトの締め付けトルクは6N-m程度から8N-m程度であり,

トルクドライバを使用すればいかに大きな力で締め付けられているかが分かります。

それはエンジンに使用されている頭がプラスのボルトは,

取り外す時に通常のドライバでは緩めるのが非常に困難であることからも容易に想像がつきます。

やはりエンジンに関するボルトの締め付けは決められたトルク管理が正確かつ確実に行われる必要があるといえます。





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