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バルブ切れによるヘッドライトHiビームインジケータの不点灯について


【整備車両】

RG500EW-2W (HM31A) RG500Γ(ガンマ) Ⅱ型  年式:1986年  参考走行距離:14,000km


【不具合の状態】

インジケータのHiの照明が点灯せず車両のヘッドライトが上下どちらに照射しているか容易に確認できない状態でした。


【点検結果】

照明が点灯しない原因は,バルブそのものが消耗している場合と,

断線や抵抗増等による回路の電流の流れの不良,照明のスイッチの不具合等が考えられ,

それらが重複している場合もあります。

したがってバルブそのものの点検と,照明スイッチを含めた回路全体の点検が最低限必要になります。

今回の事例でもメータバルブを取り外すと同時に,

バルブソケット端子まで電源電圧がかかっているか点検することから始めました。



図1 フィラメントが断線しているウェッジ球

図1は取り外したHiバルブです。

黄色い四角Aで囲んだ部分は本来フィラメントがつながっていなければなりませんが,

完全に断線していることが分かります。

これにより,まずバルブ本体の不良によりHiが点灯しなかったといえます。

次にバルブソケット端子まで電源電圧がかかっているか確認しました。



図2 Hiバルブソケット部の電源電圧の測定

図2はウェッジ球ソケットまで電源電圧がかかっているか点検している様子です。

ディマスイッチがHiの状態にてバルブを点灯させるのには十分な電圧がかかっているのを確認しました。

これにより回路は問題ないと判断し,インジケータHiの不点灯はバルブの断線であると断定しました。


【整備内容】

ソケット端子までの回路は正常であることから,ウェッジ球を新品に交換することにより機能の回復を図りました。

図3 点灯したHiバルブ

図3は取り付けた新品のバルブが確実に点灯するか確認した様子です。

黄色の四角Bで囲んだバルブが点灯しているHiバルブです。

メーター内部の照明は,周辺をかなり分解しなければ取り出せない場合が少なくありません。

そのことから必ずバルブが点灯するかどうかを,周辺部品を戻す前に確認しておく必要があります。


今回の整備では車両の年式を考慮して,

同様に消耗していると考えられるその他のバルブも同時にすべて新品に交換しました。



図4 点灯されたHiビームインジケータ

図4は正確に表示されたHiビームインジケータの様子です。

これによりライダーは交通に合わせて意図した通りにHiとLoを使い分けることができ,

安全に公道を走行できるようになりました。


【考察】

現在でこそLEDが普及して様々な箇所に使用されるようになりましたが,

1980年代に製造された車両のメーター内の照明は,ウェッジ球が使用されていることが少なくありません。

そしてバルブの構造上,,使用に伴い必ず消耗しやがて断線します。

それはいわゆる電球切れという症状です。

この事例でも電球切れといった症状が発生していました。

メーター内の照明用バルブは比較的長持ちしますが,

車両が製造から20年、30年の時を超えている場合はやはり球切れといった症状が発生してきます。

このRG500Γ(ガンマ)は1986年の製造とされています。

それを考えればバルブ切れがいつ発生してもおかしくはありません。

今回の事例では照明切れはHiのみですが,

速度計や回転計の照明バルブも同様に消耗していると考えるのが自然です。

電球の製造工程での品質のばらつきを考慮しても、1か所バルブ切れを起こしていれば,

それと同等の仕事をしているバルブは同時に交換しておくことが望ましいといえます。

そして整備性の煩雑さからメーター内の照明バルブは,

定期的にメンテナンスされている場合がほとんとないといっても過言ではありません。

つまりバルブ切れが発生した場合は,同様に他のバルブも生産後に一度も交換されていないと考えるのが自然です。

したがって,この点からも,メータ内の照明バルブが一か所でも切れた場合は,

二度手間三度手間を回避する為にもその他の照明バルブもすべて同時に交換しておくことが求められるといえます。



照明不良は単純な電球切れが少なくありません。

しかし古い車両であれば,ハーネスの損傷や端子部の腐蝕等により抵抗が増大して,

電流が流れにくくなっている場合があります。

また照明をON/OFFするスイッチの不具合が同時に起きている可能性もあります。

したがって照明不良は電球そのものと,スイッチを含めたその回路の状態を総合的に点検しておくことが求められます。



二輪自動車はエンジン稼働時はヘッドライトが同時に点灯しなければならないと定められています。

昼間でも夜間でも常時点灯する必要があり,法的には走行灯がHiであり,すれ違い灯がLoになっています。

しかし額面通りではなく,実際にはその時の交通に合わせて最適な選択が必要になります。

インジケータのHiが点灯しなくなっても直ちにエンジン性能やバイクの性能には影響がないといえます。

しかし,少なくとも公道を走行する場合は,ライダーが意思通りにヘッドライトの照射方向を操作でき,

かつ現在の状況が正確に把握できなければなりません。

四輪と違い,二輪はその形状や性質からメータは最低限のものしか装備されていないのが一般的です。

そしてインジケータは数少ない情報の表示板であることからも,

やはり不具合が発生した場合は可能な限り迅速に整備される必要があるといえます。





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