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事例:D‐25

走行距離20,000kmを超えた車両のセルモータの分解整備について


【整備車両】

GSX1300RY (GW71A) "HAYABUSA" 隼 (ハヤブサ)  年式:2000年  参考走行距離:約22,400km


【点検結果】

 この車両は走行距離が20,000kmを超えた為,

メガスピードにてエンジンオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)を実施したものです.

ここでは取り外したセルモータの分解整備について記載します.


図1.1 ブラシホルダハウジングに堆積したカーボン

 図1.1は取り外したセルモータを分解した様子です.

ブラシから削られたカーボンがホルダハウジングに堆積していました.

ブラシの長さはそれほど減っていないものの,使用に伴い削れたカーボンが周囲を汚染していました.

またコンミュテータのセグメント間にも若干カーボンが詰まっていました.


【整備内容】

 ブラシが削られた際に発生したカーボンを除去し,アーマチュアをはじめ各所点検整備しました.




図2.1 点検洗浄されたブラシホルダとそのハウジング

 図2.1は点検清掃したブラシ及びホルダとケースの様子です.

内部全体に散らばっていたカーボンを除去することにより,ブラシとコンミュテータ間にカーボンが詰まる可能性も排除され,

アーマチュアがより一層スムーズに回転できるようになりました.




図2.2 分解したセルモータ構成部品

 図2.2はブラシ及びホルダやケースを含めたセルモータの構成部品を点検清掃した様子です.

マグネト周囲にもカーボンが散らばっていた為,全体的に清掃しました.



図2.3 組み立て,組み付けの完了したセルモータ

 図2.3は部品の点検整備の完了したセルモータを組み立てエンジンに取り付けた様子です.

+と-端子部は腐食していた為,修正研磨を実施し,同様に腐食していたマウントボルトは新品に交換しました.


【考察】

 走行距離20,000km程度ではセルモータが損傷することは少ないといえますが,

大型バイクの場合は,車重が重く押しがけ等が困難であることから,

セルでの始動は必須であり,そのコンディションはマグネットスイッチ等も含めて常に良好に維持される必要があります.


 この事例ではエンジン一式分解整備を実施した際に合わせてセルモータも点検したものであり,

走行距離を考えれば,もう少し使用してからでも問題ないという見方も確かに一理あります.

しかしそれは開けてみて初めて言えることであり,例えば削れたカーボンの溜まり具合は,

400km程度のロングツーリングを重ねて20,000kmに至った車両であるのか,

あるいは20km程度の距離を毎日通勤で使用されて至った20,000kmであるのかという違いは,

単純にセルの使用回数で見ても前者は50回ですが,後者は1,000回であり,20倍もの差が出るのです.

更に週に一度調子を維持するのにエンジンをかけるだけといった様な使用をされているケースも含めれば,

走行距離からセルモータの消耗状況を割り出すことは不可能であることが分かります.

したがって,やはり走行距離が20,000kmを超えていれば一度は分解整備して内部を確認しておくことが重要であり,

その目的は,始動したい時に常に始動できる状況を維持することに他なりません.





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