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事例:D‐38

伸びたバンドによるバッテリ固定性能の低下について


【整備車両】

 RG250EW (GJ21A) RG250Γ  推定年式:1983年  (参考)走行距離:約9,200km


【不具合の状態】

 バッテリの固定バンドが伸びていてバッテリを固定する性能が低下していました.


【点検結果】

 この車両はお客様のご依頼によりエンジンの吹け上がりが悪いという症状の改善を実施したものです.

ここでは各部を点検した際に気になったバッテリ固定バンドについて記載します.



図1.1 固定の不十分なバッテリ

 図1.1はバッテリ廻りの様子です.

一見何事もなくバッテリが取り付けられている様に見えますが,

実際にはバンドの締め付けが弱い状態でした.



図1.2 古いバンド(上)と新品のバンドの自由長の比較

 図1.2は取り外した古いバッテリ固定バンド(上)と新品のバンドを比較した様子です.

取り外したバンドは新品に比べてゴム部が伸びてしまい,

その分バッテリを正しい位置で保持する性能が低下していました.

また金具の部分は経年による錆で全体的に腐食していました.



図1.3 亀裂の発生しているゴム部

 図1.3は金具とゴムの接続部の様子です.

負荷がかかる部位であることも影響していますが,左右ともに複数の亀裂が発生していて,

近い将来千切れてしまうことが予想される状態でした.

またバッテリケースとの接合部である金具は全体が著しく錆びていて見苦しい状態でした.


【整備内容】

 バッテリバンドを新品に交換することにより,バッテリ保持性能の回復を図りました.



図2.1 新品のバンドで固定されたバッテリ

 図2.1は新品のバッテリ固定バンドで確実に取り付けられたバッテリの様子です.

金具が新品になることにより,貧相な外観が一転して美しく蘇ったことは見逃せません.

これは腐食していたバッテリ端子の抵抗を減らすために磨かれたことも影響し,

特にマイナス側は外部からも見える為,その光沢は無視できません.

どれほど見た目が美しくなったのか,疑いのある方は是非図1.1と比較してみて下さい.

表面積のわずかな部品でも,錆が金属の輝きに変化するということは,これほどまでに影響が大きいのです.

それだけ金属の光沢は価値があると私は考えます.

なにも光りモノに弱いのは女性だけではないのです.


 今回の整備では,搭載されていたのが開放式バッテリでした.

したがって液面を点検して蒸発したバッテリ液を補充し,

同時にエアベントホースも新品に交換しました.

また点滅の遅くなっていたウインカリレーもあわせて新品に交換することにより,

一層の安全性の向上を図りました.


【考察】

 
バッテリはバイクの中でも最も重要な部品のひとつであり,だからこそその取り付けも重要です.

特に点火系統がバッテリに依存しないCDI搭載の車両に関しては,

バッテリの取り扱いがおろそかになっているケースが少なくなく,

中にはバッテリがないまま,つまりプラスとマイナスの端子が宙ぶらりんのまま走行されている車両が存在します.

発電された電流の行き場がなくなるため,

レギュレータにとっても非常に負荷が大きくなり故障の直接の原因になるだけでなく,

バッテリはコンデンサの役目も果たしていることから,適正な部品が取り付けられていることが大切です.

そしてバッテリの取り付けでとりわけ多いのが,バッテリバンド等の固定部品が紛失していたり,千切れ欠けていることです.

その場合,適切な位置にバッテリを固定できない為,急加速や減速・旋回時に常にバッテリが微動しているため,

端子に非常に負荷がかかります.

というのは,例えバッテリケースがあっても確実に固定されていない場合は,

端子とその配線が揺れ止めの役目をして,事あるごとに伸縮してしまうからです.

配線や端子が繰り返し負荷に弱いことは周知の通りであり,極力避けなければなりません.


 この車両は発売が1983年であることを考えれば,当然樹脂やゴム類は劣化しています.

したがって,部品が新品で手に入るのなら,各部をリフレッシュしておくことが,

実際に乗って楽しむ場合には必須事項になるのです.





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