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事例:S-126

不適切なギヤの取り付け位置によるスピードメーターケーブルの破損について

【整備車両】 
 ZZ-R250 (EX250H) EX250-H3 推定年式:1993年  参考走行距離:約12,000 km
【不具合の状態】 
 スピードメーターケーブルが破損していました.
【点検結果】 
 この車両はお客様がインターネットオークションにて購入されたものですが,各部の不具合が発生していた為,メガスピードにて整備を承ったものです.ここではスピードメーターケーブルの不具合について記載します.

図1.1 角度のきついメーターギヤ
 図1.1 はスピードメーターケーブルの取り付け部にあるギヤの様子です.ケーブルがへの字に曲がっているのはギヤの取り付け角度がきつ過ぎることによるものです.これによりケーブルが損傷しやすくなっていました.

図1.2 被覆の破れているスピードメーターケーブル
 図1.2 は取り外したスピードメーターケーブルの様子です.被覆が破れていることが分かります.近い将来内部の破損といった保安基準に適合しなくなる損傷に至ると推測されます.スピードメーターが走行中に動かなくなれば運転がかなり不安になる為,早めに整備しておくことが大切です.


【整備内容】
 損傷していたスピードメーターケーブルを新品に交換し,ギヤの取り付け位置を適正にしました.

図2.1 適切に取り付けられたスピードメーターギヤ
 図2.1 はスピードメーターギヤの取り付け位置を適切にした様子です.最初はaで示した部位にbで示したギヤが一致していました.その状態ではケーブル取り出し口が上を向くため,スピードメーターケーブルに角度が付いてしまいます.したがって,調整可能範囲でbの位置までずらし,ケーブルの取り付け角度が緩くなるようにしました.
 ここで重要なのは,フロントフォークのギヤストッパに調整範囲があるということです.ギヤをフォークで挟むタイプの場合,遊びが存在する為,図2.1 の様に考えて取り付けないと,図1.1 の様に角度が付いてしまうことです.どちらも取り付け許容範囲内ですが,回転角を考えて付ければ自ずと適切なのは図2.1 の位置以外は存在しないことになります.マニュアル通りではなく,常に考えて整備することが一流の整備技術者になる為の最低条件であるという立場を私も支持します.

図2.2 適切に取り付けられたスピードメーターケーブル
 図2.2 は新品のスピードメーターケーブルを適切な位置に直したギヤに取り付けた様子です.ケーブルは図の様に滑らかな弧を描きながらスピードメーターへと向かいます.同時に各部を整備し,実際に試運転において問題なく動作することを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 スピードメーターケーブルが接続されるギヤはフロントフォークのストッパーで位置決めされるものがほとんどです.そしてストッパーが1つのものと,2つで挟むものがあり,この事例は後者のタイプです.その場合,遊びが存在するモデルがあり,この事例の様に調整次第ではかなりケーブルの取り出し角度に差が出ます.

 この車両はインターネットオークションで購入されたというものですが,個人売買であれ,業者から購入したものであれ,車両の過去の整備状態は分かりません.業者でも素人整備しかできない輩はたくさんいますし,普段はまったく整備とは関係ない仕事をしている個人でも確かな腕を持つ人もいます.私はその差を 『考えて作業できるかどうか』 に集約されると考えます.

 お客様から整備のご依頼をいただけたのは,メガスピードとして何かの縁だと思い,与えられた条件の中で最大限良い状態にしたいと思いながら取り組んでいます.その為にも,常に考えることをせよ,と自分に言い聞かせています.中々難しいことですが,それでも考え続けなければなりません.

 人間は考える葦だなんて,素敵な言葉だと思うのです.





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