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事例:S‐26

スピードメータワイヤのほつれによるスピードメータの動作不良について


【整備車両】

 CB250RS
A-Ⅱ (MC02)   推定年式:1981年  参考走行距離:約16,500km


【不具合の状態】

 走行中にスピードメータの指針が動かなくなりました.


【点検結果】

 この事例では不具合が連続的に発生しました.

その内容は大きく2つにわけることができます.

最初にスピードメータの針が折れたこと、次にスピードメータワイヤがほつれてしまったことです.


まずお客様が自走でメガスピードに整備のご依頼で車両を持ち込まれる際に,

スピードメーターの針が折れるといった症状が発生しました.



図1.1 指針の折れたスピードメータ

 図1.1は中間あたりで2つに折れたスピードメータの指針の様子です.

指針は樹脂なので,経年劣化や振動によって折れたと判断できます.

この状態では正確に速度を把握するのは難しいといえますが,

残った針の角度からおよその速度は認識できる状態でした.

しかしこのままでは公道を走行する上で支障をきたす為,メガスピードで対策をとることになりました.

すでにスピードメータは絶版になっているので,お客様とご相談の上,ひとまず中古を使用することにしました.




図1.2 動作確認された中古のスピードメータ

 図1.2は動作を確認した中古のスピードメータを車体に取り付けた様子です.

同時に古くなっていたスピードメーターワイヤも新品に交換し,

試運転を行い特に問題が発生していないことを確認して納車しました.



その数週間後,お客様からメータ付近で異音が発生しているというご連絡があり,

改めてメガスピードに持ち込まれることになりました.

自走でご来社いただく際にスピードメータ後部から異音がした為に,ワイヤの付け根を動かしたところ,

何か音がしてそれ以来メータの指針が動かなくなってしまった,という状態で入庫されました.



 スピードメーターの針が動かない原因として大きく3つに分けることができます.

まずメーター本体の故障,次にメーターにケーブルを接続するギヤ部の破損,そしてメーターケーブルの破損です.

今回の事例ではスピードメータを取り外し単体で動作を確認するときちんと針が動くことや,

ホイール側のスピードメータギヤに目立つ損傷がなく,ギヤもホイールの動きと同調して動作確認できました.

残りはスピードメータワイヤですが,

数週間前にメーターワイヤは新品に交換した為に破損している可能性は低いと考えられます.

ですが,その他の部品は間違いなく動いているので,消去的にスピードメーターワイヤを点検しました.

指で片側を回転させると,もう片側もロスすることなく回転するので問題ないと仮定することができますが,

念の為被覆の中身を確認すると,新品のはずのワイヤがほつれていました.



図1.3 巻き線のほつれたワイヤ

 図1.3はスピードメータギヤワイヤの被覆の中身の様子です.

指でゆっくりワイヤを回す分のエネルギー伝達は可能なものの,

ワイヤのほつれにより実際に走行した場合のホイール側スピードメーターギヤからの動力を,

正確にスピードメータに伝達することができなくなっていたと判断できます.

これでスピードメータの指針が動かなかった原因が判明しましたが,

次に,何故新品に交換したばかりのワイヤがここまでほつれてしまったかを考える必要があります.

ワイヤはホイール側とメータ側に接続されていますが,ほつれはホイールにかなり近い部分で発生していました.

しかしホイールのメータギヤは機械的にホイールの動力を変換し,目立つガタつきや損傷が見られないことから,

メータ本体をさらに点検しました.



図1.4 ワイヤ差し込み部にガタが見られるスピードメータ

 図1.4はスピードメータワイヤをメータに差し込む部分ですが,

外部から判断できるほど付け根にガタつきが発生していました.

ガタつきがどの部分から起こっているか状態を確認する為にスピードメータ内部を取り出しました.



図1.5 ガタつきのあるメータ本体とワイヤホルダの接続部

 図1.5はスピードメータ裏側の様子です.

赤い四角Aで囲んだ部分はワイヤからの動力をメータに伝達する部分です.

この部分に大きなガタつきが発生していました.

ワイヤを取り付け部に挿入し,ガタつきの範囲を変えながら回していると,ある傾き点でワイヤの動きがロックされる,

あるいは渋くなる部分が確認できました.

このことからワイヤは走行中にメータの取り付け部でロックした為に,

ホイール側からの行き場を失った動力が一番弱い部分すなわちワイヤをほつれさせることで解消されたと考えられます.

その結果ホイール側から起電力を発生させるのには十分なエネルギーがメータ内部で発電されず,

スピードメータの指針が動かなくなったと結論付けられます.


 タコメータにも同様にガタつきが発生していて,

タコメータ側からも異音が聞こえるというお客様からの情報があったので,

上記の点検結果からスピードメータと同様に近い将来同じ症状を発生させる可能性が非常に高いと判断し,

スピードメータと一緒に対策をとることにしました.


【整備内容】

 すでに車両の発売から30年が経過しており,動作を確認した中古部品でも耐久に信頼性が欠ける為,

スピードメータ及びタコメータ,インジケータを社外の新品に交換する方向でお客様と打ち合わせを行い,

イグニションを含め,新設するメータ等をマウントするプレートをメガスピードで作成し,

純正を意識されたお客様のご希望の配置で仕上げることになりました.




図2.1 新品のメータとメータステー

 図2.1は新品のスピードメータ及びタコメータ,インジケータをメガスピードで作成したメータステーにマウントした様子です.

信頼性を確保する為にスピードメータもタコメータもデイトナの電気式を採用しました.

インジケータも純正を意識した配置にし,メータ枠やステーの表面処理に合わせ,

メガスピードで作成したプレートも鏡面仕上げにしました.

外観も非常に美しく,ライディングはもとより眺めているだけでも楽しくなる様な仕上がりになりました.

20km程試運転を行い,動作に問題がないことを確認して整備を完了し納車しました.



図2.2 各メータの夜間照明

 図2.2は夜間におけるスピードメータ,タコメータ及びニュートラルランプの照明の様子です.

純正のメータに比べて格段に見やすく,より安全に快適なライディングを行うことができるだけでなく,

その表示の美しさそのものを楽しむことができるようになりました.


【考察】

 今回の事例では動作を確認して交換した中古のスピードメータが数週間で破損するという事象が発生し,

最終的には社外の新品のスピードメータで対応することになりました.


 中古部品でも長持ちするものもあれば,すぐにダメになるものもあります.

新品の90%も消耗している中古部品と,新品の10%程度しか消耗していない中古部品の見極めは,

外部からの単純な動作確認では難しい場合が少なくありません.

この事例で使用した中古メータも取り付けた時は差し込み口のガタつきは確認できませんでした.

しかし,取り付け後すぐにガタつきが発生したということは,

内部ではガタつきの要因になる摩耗等が発生していた可能性があります.

もし中古メータを取り付けるときにメータ枠を取り外し中身まで確認していれば,

不具合の発生する可能性を発見できたかもしれません.

しかし中古部品にそこまで分解点検を行えば,その技術料等のコストで新品価格を超える可能性が十分にあります.

そして不具合が発見された場合は,可能であれば修理されるか,次の中古メータを探すことになり,

良好な結果が得られるまで繰り返さなければなりません.

あるいは分解点検して特に問題ないと判断した場合でも,

取り付けてすぐに予期せぬ箇所から不具合が発生する可能性も否定できません.

そこまでして中古メータを取り付けるのであれば,

その分のコストを見込んで初めから新品にした方が良い結果が得られる場合が少なくありません.

もちろん純正形状を絶対維持するという方向になれば,

中古品の調達やその点検整備といったコストを見込まなければなりません.


 メガスピードでは純正形状を保ちたいとされるお客様のご希望にそえるよう日々精進しており,

可能な限りその仕事を承っております.

しかしお客様が純正のスタイルに絶対的にこだわらないのであれば,

社外であっても新品にした方が間違いないと判断できる場合があるので,

新品を使用することを選択肢に含めるべきであるといえます.


 この事例では機械的な部分での不具合の連鎖であったので,

スピードメータもタコメータも信頼性を加味しデイトナ製の電気式を採用しました.

純正に比べて明るく,且つ美しい照明は視認性の向上による安全性の確保のみならず,

走行中の車両の状態が把握しやすくなればライダーの負担も軽減されます.

そしてその照明の美しさを楽しむ喜びに加えてライダーはメーター廻りが近代化されたようなイメージを抱き.

今までとはまた違った趣でリフレッシュした気持ちで走行することができます.


 今回の事例では、走行に必要とされる機能を維持する為にメータ廻りがカスタマイズされました.

しかしメガスピードでは安易に加工されたり信頼性の確保できない部品に交換され,

カスタムと称されバランスや機能がめちゃくちゃにされた車両を良しとしません.

性能の確保,信頼性,安全性等を総合的に判断し,

公道を走行する上で問題がないと判断して初めて“カスタム”したといえるのです.





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